最高裁、白山市長が白山比メ神社の御鎮座二千百年式年大祭奉賛会発会式で式辞を述べたことを政教分離に反しないと判示


憲法20条3項、89条の政教分離規定については昨年の空知太神社事件で、自治体が神社に敷地を無償使用させることが政教分離に反するとした判決を出して大きな動きがありました。

この判例は、日本の各地で自治体が町内会の施設と一体化している地域の氏神を祀った神社に敷地を無償使用させている例が多くあることから日本中の自治体に大変な衝撃を与えました。

また法的にみても、この判例は、津地鎮祭事件以来、政教分離の判断基準として使われてきた目的効果基準を採用しなかったために、重大な意義を有するものでした。

この事件について詳しくは以下の記事をご覧ください。

JAPAN LAW EXPRESS: 砂川市が市有地を神社に無償使用させているのを政教分離違反とした最高裁判決の検討

 

このような政教分離について重要な動きがあった状況下で、またもや政教分離が問題となった事件について最高裁判決がでました。

 

最高裁判所第一小法廷平成22年07月22日判決 平成20(行ツ)202 白山ひめ神社御鎮座二千百年式年大祭奉賛会損害賠償請求事件

白山市にある白山比咩神社が、鎮座2100年を記念して御鎮座二千百年式年大祭を行うことになり、同大祭の奉賛会が発足しました。この奉賛会の発会式が行われた際に白山市長が出席して式辞を述べたところ、同市の住民が当該行為は政教分離に反する行為であり、このために支出した市長の運転職員の手当て等相当額の損害賠償を市長に請求する住民訴訟を提起しました。

原審は、目的効果基準に照らして、宗教的活動になると判断して請求を一部認容していました。

最高裁がまとめによると原審の判断の骨子は以下のようになります。

奉賛会の事業は,本件神社の宗教上の祭祀である本件大祭を奉賛する宗教活動であり,本件発会式は,上記宗教活動を遂行するために,その意思を確認し合い,奉賛会の発足と活動の開始を宣明する目的で開催されたものである。

(略)

本件発会式に出席して祝辞を述べた行為は,上記宗教活動につき賛同,賛助及び祝賀の趣旨を表明し,ひいては本件神社の宗教上の祭祀である本件大祭を奉賛し祝賀する趣旨を表明したものと解されるから,市長としての社会的儀礼の範囲を逸脱している。したがって,その当時市長の職にあった同人の上記行為は,その目的が宗教的意義を持ち,かつ,その効果が特定の宗教に対する援助,助長,促進になる行為であり,憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり,前記時間外勤務手当のうち上記行為に伴う部分の支出は違法である。

 

政教分離と目的効果基準の関係の確認ですが、憲法の条文上は政教分離が定められていますが、津地鎮祭事件によって政治と宗教が完全にかかわらないのは無理があるので、かかわり合いが相当を超えることを許さないものであるとされました。

この相当を超えるかの判断基準が、目的効果基準です。

問題となっている行為のその目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為であるとかかわり合いが相当を超えるとして政教分離に反することになるわけです。

これが政教分離についての規範でしたが、上記、空知太神社事件では最高裁はこの目的効果基準を用いず、社会通念に照らして総合的に判断するという新しい枠組みを用いました。

これは、神社に公有地を敷地として無償使用させる行為は宗教的意義しかなく、世俗的目的と宗教的目的が混在しているときにどちらにより向いているかを判断する基準である目的効果基準は妥当しないからであると述べられています。

 

最高裁はこの事件では、原審と同じく規範としては目的効果基準を採用しました。

これは本件の神社や発会式について以下のような事実があることから、市長の行為が宗教的行為そのものではなく、世俗的な行為との両面を併せ持つ目的効果基準になじむものであったためです。

地元にとって,本件神社は重要な観光資源としての側面を有していたものであり,本件大祭は観光上重要な行事であったというべきである。奉賛会は,このような性質を有する行事としての本件大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体であり,その事業自体が観光振興的な意義を相応に有するものであって,その発会に係る行事としての本件発会式も,本件神社内ではなく,市内の一般の施設で行われ,その式次第は一般的な団体設立の式典等におけるものと変わらず,宗教的儀式を伴うものではなかった

また、式辞の内容も儀礼的な式辞の範囲を超えないという事実もありました。そこで市長の行為について以下のように述べています。

特定の宗教に対する援助,助長,促進になるような効果を伴うものでもなかった

よって、かかわり合いの程度が相当を超えるものではないとして、政教分離に反しないとしています。

したがって、原判決を破棄して、控訴を棄却して請求を棄却していた第一審判決を支持しています。

 

空知太神社事件とはまったく逆のように社会的には思われないでもないかもしれませんが、空知太神社事件を前提としても判例の立場からは、事実関係から当然の帰結であると考えられます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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