最高裁、アパマンショップホールディングスがグループ企業の完全子会社化をする際に少数株主から評価額よりも高値で株式を買い取ったとして、同社株主が取締役らに対して善管注意義務違反があるとして損害賠償請求をした事案で請求を認容した原判決を破棄


アパマンショップホールディングスが、グループ再編をした際に、3分の2の株式を保有しているものの少数株主も存在するグループ企業を完全子会社化することになり、その少数株主から任意で株式を買い取ったのですが、その際の価格が、設立時の払い込み価格である5万円としたために、監査法人等の算出した株式評価額(9,709円、6,561~19,090円の二種類の評価がある)を大きく上回ってしまいました。

これに対して、同社の株主がこの取引を決定した取締役には善管注意義務違反があり損害賠償を会社にするように求める責任追及訴訟を提起しました。

原審は株主の請求を一部認容していたのですが、最高裁は判断を一転させて、請求を棄却しました。

最高裁判所第一小法廷平成22年07月15日判決 平成21(受)183 損害賠償請求事件

この事件では、上記のような持株比率と買取価格と評価額に関する事実のほかに、少数株主は同社事業のフランチャイズオーナーであることと5万円が提案された際に、弁護士が基本的に経営判断の問題であり、当該金額は許容範囲内であるとする意見を述べていたという事情がありました。

 

原審は、上記の弁護士の見解と同じくいわゆる経営判断の原則の規範に則ったと思われるのですが、それよりも安い金額等についての十分な検討調査がされていないとして、善管注意義務に反して任務懈怠があるとして一部認容をしました。

 

これに対して最高裁は、同じく経営問題であるとする理解は示しつつも、以下のような規範の判示を行いました。

事業再編計画の策定は,完全子会社とすることのメリットの評価を含め,将来予測にわたる経営上の専門的判断にゆだねられていると解される。そして,この場合における株式取得の方法や価格についても,取締役において,株式の評価額のほか,取得の必要性,参加人の財務上の負担,株式の取得を円滑に進める必要性の程度等をも総合考慮して決定することができ,その決定の過程,内容に著しく不合理な点がない限り,取締役としての善管注意義務に違反するものではないと解すべきである。

この判示部分は、経営判断原則を事業再編の側面について敷衍したものと考えられます。

経営判断原則は、情報収集とその収集した情報から当該経営判断が合理的といえるかを判断するのが内容ですが、事業再編の際に考慮する要素について詳細に示したものといえると思われます。

その上で以下のようなあてはめを行っています。

以上の見地からすると,参加人がAの株式を任意の合意に基づいて買い取ることは,円滑に株式取得を進める方法として合理性があるというべきであるし,その買取価格についても,Aの設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば,払込金額である5万円を基準とすることには,一般的にみて相応の合理性がないわけではなく,参加人以外のAの株主には参加人が事業の遂行上重要であると考えていた加盟店等が含まれており,買取りを円満に進めてそれらの加盟店等との友好関係を維持することが今後における参加人及びその傘下のグループ企業各社の事業遂行のために有益であったことや,非上場株式であるAの株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるAの企業価値の増加も期待できたことからすれば,株式交換に備えて算定されたAの株式の評価額や実際の交換比率が前記のようなものであったとしても,買取価格を1株当たり5万円と決定したことが著しく不合理であるとはいい難い。そして,本件決定に至る過程においては,参加人及びその傘下のグループ企業各社の全般的な経営方針等を協議する機関である経営会議において検討され,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践されているのであって,その決定過程にも,何ら不合理な点は見当たらない。

色々な点についての言及になっているので、整理は難しいですが、上記に記述した事実のほかに、非上場株式であること、会社設立からそれほどたっていないこと、事業再編後の効果も期待できることから、評価額からかなりかけ離れていても不合理ではないといっていると考えられます。

やはり、金額がかなりかけ離れているといわざるを得ないので、本件の事実のどれもが不合理ではないと評価するためには必要となるぎりぎりの事案ではないかと考えられます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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