株主総会の議決権行使結果開示で全票集計したのは4%強にとどまると判明


今年から株主総会の議決権行使結果を臨時報告書で開示することが義務付けられましたが、実はすべての議決権行使の結果を開示しなくてもよいことから、全票を集計したのか否かについて日経が調査したところ、全票集計は4%強程度にとどまることが明らかになりました。

全票を集計しなくて良い根拠は、企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2ニにあります。

企業内容等の開示に関する内閣府令

第十九条 法第二十四条の五第四項 に規定する内閣府令で定める場合は、次項各号に掲げる場合とする。

法第二十四条の五第四項 の規定により臨時報告書を提出すべき会社(指定法人を含む。)は、内国会社にあつては第五号の三様式、外国会社にあつては第十号の二様式により、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める事項を記載した臨時報告書三通を作成し、財務局長等に提出しなければならない。

九の二 提出会社の株主総会において決議事項が決議された場合(当該提出会社が法第二十四条第一項第一号 又は第二号 に掲げる有価証券に該当する株券の発行者である場合に限る。) 次に掲げる事項

当該株主総会が開催された年月日

当該決議事項の内容

当該決議事項(役員の選任又は解任に関する決議事項である場合は、当該選任又は解任の対象とする者ごとの決議事項)に対する賛成、反対及び棄権の意思の表示に係る議決権の数、当該決議事項が可決されるための要件並びに当該決議の結果

ニ ハの議決権の数に株主総会に出席した株主の議決権の数(株主の代理人による代理行使に係る議決権の数並びに会社法第三百十一条第二項 及び第三百十二条第三項 の規定により出席した株主の議決権の数に算入する議決権の数を含む。)の一部を加算しなかつた場合には、その理由

上記の規定から、理由があれば、すべての議決権行使結果を載せなくて良いのです。

そのため、書面投票などの事前行使分で承認が確実になったら、それで済ませてしまうことが多くなります。

その結果、4%強しか全議決権行使を集計して開示していないという結果になったものようです。

この現象については、反対票を低く見せることになりかねないため、ファンドなどの活動やそれらを支持する動きを抑制する効果があると考えられ、批判が出ています。

これは会社の状況を明らかにするという開示本来の目的に反するということにつながるので、重大な批判につながりうると考えられます。

議決権行使結果の開示そのものには、会社法的な意味での特段の法的効果はありませんので、集計に些細な誤りがあってもそれほど重大な事態にはならないと考えます。よって、それほどの負担ではないので全部集計するべきということはいいやすく、今後は厳格化を求める見解が出てくることも考えられるのではないでしょうか。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “株主総会の議決権行使結果開示で全票集計したのは4%強にとどまると判明

  1. いつも拝見しています。
    さほど念入りではありませんが(失礼)。
    私も東大法学部卒です。とりあえずハクが欲しかっただけで、全然法律やる気はなかったのですが、今や某大企業で商事法務を担当しております。
    さて、行使結果の開示。
    4%でもできすぎだと思いますよ。問題は、当日出席者の賛否集計です。
    ほとんどの会社はズルではなく、当日出席者分を集計対象から除いているだけのはずです。
    当日の賛否の人数を集計するだけなら比較的簡単でしょう。
    しかし、議決権数は人によって異なります。
    だから、当日出席者の賛否議決権数を集計するには、各入場者すべてについて、誰が賛成で誰が反対かを特定しなければなりません。
    となると、電子デバイスを全員に持たせるか、投票機に並ばせるか、投票箱で投票させ集計するか、が必要になります。
    出席者数十人ならともかく、数百人を超えてくるとどうしますか?フィージブルでしょうか?
    東京スタイルが村上ファンドに攻められたとき、総会に数時間かかったのも集計のせいです。もっとも、彼らの場合は、委任状の鑑定と振り分けに時間がかかったはずですが。
    開示府令のパブコメでも「この技術が進んだ時代、当日会場での賛否を採るくらい簡単」などというのが複数あり、「無責任なことを言うな」と思ったものです。
    とは言いながら、実は、私も昔、委任状争奪戦に巻き込まれ、実投票には何が必要かを検討したことがあるのですが・・・。

  2. コメントありがとうございます。
    ご意見をいただけるというのは非常にありがたいです。
    私も現場感覚でいうなら、支配権争いをしており当日出席して行使する株主が多いという特殊状況でもなければ、事前投票で決まっている以上無駄な作業ですから、やらなくていいと思います。
    計算を間違っても大変ですし。
    もっとも、間違っても決議取消事由になることはないでしょうから、重大な法的効果がないならやってみてもいいのではとも思うのですが、大企業ならやるなら間違いのないように慎重にやらざるを得ませんからやはり大変な負担になるのは当然ですよね。
    やはり全面開示論は観念的に過ぎるのだと思います。
    不思議なことに、マスコミでいくつか「議決権行使結果の開示に裏技がある」的な書き方をした記事が相次ぎましたね。あの辺の見解が、当日行使分も含めた開示を義務付ける方向へと誘導するアドバルーンになりはしないかと思っているところです。
    ちなみにICタグとかを活用してただちに全面開示を可能にした例を見つけてこのブログでも取り上げましたが、具体的にはどういう方法なのでしょうかね。よくわからないのですが、それなりにコストのかかる方法なのではないかと想像しています。

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