細谷火工、利益相反取引があり善管注意義務違反があったとして常勤監査役が代表取締役等の役員と元役員に対して損害賠償請求訴訟を提起


火工品の製造販売などを行いジャスダック上場の細谷火工で、監査役が代表取締役などの役員と元代表取締役に対して損害賠償請求訴訟を提起する事態になっていることが明らかになりました。

訴訟の提起に関するお知らせ

損害賠償請求をする理由は、被告である役員と元役員には善管注意義務違反があるというものであり、それは利益相反取引を行ったことであるとされています。

上記リリースによると、被告の一人である元代表取締役の所有する土地を細谷火工は取得しており、これが利益相反取引に該当するため取締役会で承認決議を取って行われているのですが、この土地はそもそも、細谷火工が地上権を設定して造成も自ら行いこれまで利用してきた土地であったのに、それを考慮に入れてない価格で取得しているために会社に損害が生じたというものです。

取締役と会社の関係は、委任です(会社法330条)ので、善管注意義務を負うことになります(民法644条)。

善管注意義務を怠ったときとは、会社法の規律に照らすと任務懈怠があったことということになりますが、利益相反取引は取締役の承認を得ることを求める規律になっていますが、承認を任務懈怠の有無はリンクしておらず、結果として損害が出たら、任務懈怠を構成することがあります。

会社法には任務懈怠の推定規定があり、利益相反取引の当事者の取締役と、承認をした取締役たちも任務懈怠が推定されるために、まとめて損害賠償請求を受けているわけです。

第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する

一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

利益相反取引に関する任務懈怠の有無が争点になるので、任務懈怠の判断について、一元説なのかニ元説なのかが問題になりそうな事案に思えなくもありません。

田中亘准教授は、任務懈怠一般は一元説としつつ、利益相反取引はニ元説とされています。これは利益相反取引の場合、結果的に会社に損害が生じてしまう場合があるので、結果責任を問うのは酷であるというお考えのようです。

しかし、上記のリリースのとおりだとすると、本件は、偶然会社に損害が生じたのではなく、地上権のある土地を高く評価しすぎというある意味故意のあるケースです。

よって、仮にニ元説だといったところで、どうみても過失がないということにはならなそうです。したがって、法的構成で結果が左右されるわけではなく、あくまで事実の評価によって結論が出る事件になりそうです。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “細谷火工、利益相反取引があり善管注意義務違反があったとして常勤監査役が代表取締役等の役員と元役員に対して損害賠償請求訴訟を提起

  1. 細谷火工で監査役が提起した役員に対する損害賠償請求訴訟が監査役の交替によって取り下げられる

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