日産化学、ケミカルサービスの吸収合併における反対株主による株式買取請求に応じて自己株式を取得したことを公表


東証一部上場の日産化学が、完全子会社のケミカルサービスを吸収合併した際に反対株主12名から株式買取請求権が行使され、これに応じて自己株式を取得したことが日産化学から公表されました。

吸収合併に対する反対株主からの自己株式の買取りに関するお知らせ

4月1日を効力発生日とする吸収合併なので、ほぼ2ヶ月で決着しています。

効力発生日から30日以内に価格についての協議が調わない場合には裁判所に価格決定の申立てをすることができるという規律になっているので、2ヶ月で決着したということは価格について協議が調ったということが時系列からして伺われます。

第797条(反対株主の株式買取請求)

吸収合併等をする場合には、反対株主は、存続株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

2 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。

一 吸収合併等をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主

イ 当該株主総会に先立って当該吸収合併等に反対する旨を当該存続株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該吸収合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)

ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

二 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主

3 存続株式会社等は、効力発生日の二十日前までに、その株主に対し、吸収合併等をする旨並びに消滅会社等の商号及び住所(第七百九十五条第三項に規定する場合にあっては、吸収合併等をする旨、消滅会社等の商号及び住所並びに同項の株式に関する事項)を通知しなければならない。

4 次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

一 存続株式会社等が公開会社である場合

二 存続株式会社等が第七百九十五条第一項の株主総会の決議によって吸収合併契約等の承認を受けた場合

5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

6 株式買取請求をした株主は、存続株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

7 吸収合併等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。

第798条(株式の価格の決定等)

株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と存続株式会社等との間に協議が調ったときは、存続株式会社等は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。

2 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は存続株式会社等は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

3 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。

4 存続株式会社等は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

5 株式買取請求に係る株式の買取りは、当該株式の代金の支払の時に、その効力を生ずる。

6 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

条文の確認ですが、完全子会社を吸収合併したので反対株主がいるのは存続会社側ということになることから、条文は797条以下のほうの株式買取請求になります。

なお、完全子会社というと略式合併はどうなのかということが気になります。この点によっては株主総会で議決権があるかが変わってくるために、株式買取請求権のある株主に違いが出てきます。

略式合併とは要するに議決権の90%を支配する会社を相手にするときに従属している会社のほうで株式総会決議を不要にするというものです。

本件で問題となっている株主は親会社側のほうですので、日産化学においては略式合併の問題になりません。

一方、ケミカルサービスの規模によっては、簡易合併で済ませられる場合がありえます。この場合には日産化学側でも株主総会決議を不要にできます。

日産化学のリリースによると、本件はまさに簡易合併であったことがわかります。

連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

本合併は、当社においては会社法第796条第3項に定める簡易合併、ケミカルサービスにおいては同法第784条第1項に定める略式合併の要件を満たすため、いずれも株主総会の承認を得ることなく行うものです。

よって、本件は、797条2項2号からすべての株主に株式買取請求権があることになり、比較的容易に株式買取請求権の行使ができる場合でした。もっとも、行使している株主は12名にとどまっています。

反対株主の株式買取請求権というと、協議が調わず価格決定の申立に至り、争いが長く続く例が目立ちますが、穏当に終わっている例もいくらかある例があります。これもそのような一件です。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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