最高裁、NTT東日本が経営再建策として行った配転の有効性が争われた訴訟で配転を有効とする一方、一名について慰謝料を認めた原判決を維持 配置転換は有効という結論に


昨日の企業年金もそうなのですが、NTTは経営再建のために大規模なリストラ策をとりました。

その中に、NTT東日本において、地方勤務の社員に対して、退職して子会社で再雇用するか、残留して大規模な配転に応じるかという選択をさせるという人員配置の適正化策があったのですが、残留を選択したところ、配転された社員が配転の無効を主張して訴訟になっていました。

6月4日、最高裁は、配転を有効としつつ、北海道から東京に配転になった1名について慰謝料のみを認めた原判決を支持して、会社・社員双方からの上告を棄却して、配転は有効という決着を見たことが明らかになりました。

5人の配置転換有効が確定 NTT東リストラ訴訟 – 47NEWS(よんななニュース)

NTT東日本の元社員ら5人が、リストラで遠隔地に異動させられたのは違法だとして配置転換の無効確認と慰謝料を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は7日までに、会社側、社員側双方の上告を退ける決定をした。5人の配置転換を有効とした上で、うち1人の慰謝料150万円を認めた二審札幌高裁判決が確定した。決定は4日付。

(略)

昨年3月の二審判決は全員の配転に必要性を認め、一審判決を変更。慰謝料は4人分を取り消し、東京に配転となった男性1人については「両親の介護が必要で、配転は不可欠ではなかった」と判断、慰謝料を50万円増額し150万円とした。

(略)

配転のある残留を選択したのに配転を不服とするのは都合のいい話に思えなくもないですが、配転一般に共通であると考えるのが妥当でしょう。

よって、配転命令権があり、具体的な配転が濫用でない場合に有効となることになります。

そして、その濫用の判断においては、東和ペイント事件の判例で示されたとおり。業務上の必要がない場合、不当な目的、通常甘受すべき程度を著しく超える程度の不利益を課す場合に濫用となることになります。

配転がリストラの一環であるということは上記の業務上の必要性の判断において斟酌されるものということになりましょう。

この規範はかなり厳格であるために、配転が濫用とされることはまずなかったのがこれまでの判例裁判例でしたが、育児介護休業法26条に事業主の配慮義務が設けられたことで、当該労働者に家族の介護等がある場合の配転については濫用と判断されることが出てきています。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

第26条(労働者の配置に関する配慮)

事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

本件においても、原告のうち、北海道から東京への配転を命じられた労働者は家族の介護が必要であるという事情がありました。このことと配転の必要性について原判決は上記のように配転が不可欠ではないことを認めているのですが、濫用で無効とはせず、配転そのものは有効という判断をしました。

介護を重視する近時の裁判例の流れからはずれる判断になっています。

その代わりに慰謝料を増額しているのですが、介護の必要があるものの配転は無効ではなく、慰謝料で金銭解決というのは、介護は単純に金銭解決できるわけではないことを考えると解決としてどうなのかという感じがします。

リストラが必要であるという深刻な経営状態も勘案すると配転を有効としないわけにはいかないということでバランスをとったということなのでしょうが、どちらにとっても解決にはならないように思えます。

判例情報

最決平成22年6月4日

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “最高裁、NTT東日本が経営再建策として行った配転の有効性が争われた訴訟で配転を有効とする一方、一名について慰謝料を認めた原判決を維持 配置転換は有効という結論に

  1. 使用者と被使用者の関係は複雑なほど配置転換や昇進差別などで具体化しますね。それは内部関係秩序だとするのが一般的でしょうが、公法関係からは一部修正の兆しがみられる。いわゆる政治家と秘書の問題ですね。暴力団の共謀共同正犯なんかも修正局面に入った古い部類です。
    私的な雇用関係が、どこまで強制になじむか、マクドナルドの残業費請求事件以来の、難しい価値判断だと思います。結局、個人の生計の資である雇用を最大の価値とみて、企業側に譲歩を求めたということですね。温情裁判だけに、その慰謝料は企業の強引さへの戒めとみるべきかもしれませんね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)