最高裁、違法な固定資産税の賦課決定によって損害を被った納税者は、地方税法所定の不服申立ておよび取消訴訟の手続を経ることなく国家賠償を求めうると判示


租税法律関係は、安定と早期確定が求められることから、行政訴訟でも特別な扱いをされることが多いですが、違法な課税がされた場合に、この租税法律関係の特別扱いの原則的立場に反して、租税法専用の手続をとらなくても国家賠償を求めることを認めた最高裁判決が出ました。

最高裁判所第一小法廷平成22年06月03日判決 平成21(受)1338 損害賠償請求事件

この事件で問題となったのは、地方税のうち固定資産税です。

名古屋市長が本件で問題となった倉庫について、固定資産の価格決定にあたり、冷蔵倉庫に該当するのに高くなる一般用の倉庫と間違えて評価して税額を決定、それにしたがって納付してきたところ、間違いに気づいて還付があったものの、古い分については行われなかったので、それについて国家賠償請求をすることで過大に払った税金を取り戻そうとした事件です。

固定資産税については、固定資産税評価審査委員会に対する不服申立てと、その決定に不満がある場合には取消訴訟が用意されており、提訴期限があります。

ここから、原審は、租税法律関係の早期確定と課税処分の公定力を否定することになるとして請求を棄却しました。

国家賠償をする場合には、取消訴訟をしておく必要はないというのは有名な判例があり、国賠には公定力(または取消訴訟の排他的管轄)は関係がありません。よって、租税法律関係ゆえの特別な考慮をしたことになりますが、最高裁はこれを否定しました。

地方税法は,固定資産評価審査委員会に審査を申し
出ることができる事項について不服がある固定資産税等の納税者は,同委員会に対する審査の申出及びその決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができる旨を規定するが,同規定は,固定資産課税台帳に登録された価格自体の修正を求める手続に関するものであって(435条1項参照),当該価格の決定が公務員の職務上の法的義務に違背してされた場合における国家賠償責任を否定する根拠となる
ものではない。

さらに、

行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについては,あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではない(最高裁昭和35年(オ)第248号同36年4月21日第二小法廷判決・民集15巻4号850頁参照)。このことは,当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としており,その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば,結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得ら
れるという場合であっても異ならないというべきである。

としました。

よって、公定力が及ばないという国家賠償の原則論と、公務員の違法と租税法律関係は別という点を根拠にしていることがわかります。

そこから以下のように結論付けています。

したがって,たとい固定資産の価格の決定及びこれに基づく固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合であっても,公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは,これによって損害を被った当該納税者は,地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく,国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。

無効の瑕疵がなくても国家賠償請求可能としている点はかなり衝撃的なのではないかと思われます。

上記の判示は、地方税法のうち固定資産税に関しての解釈として導かれていますが、構成は租税法律関係一般のそのまま妥当するものであり、大変広汎な射程を持つと考えられます。

これだと租税法律関係の早期確定を定めている租税法の各種規定が実質的に空文化してしまうことが考えられますが、その点については補足意見で、国家賠償においては職務行為基準説にたっているので、取り消しの瑕疵があっても国家賠償が認められない場合はあるという指摘がされています。

しかし、そうはいっても争われうる場合が飛躍的に増大することから、実務には大きな影響を与えるのではないかと考えられます。もっとも租税法律関係についても訴訟で争うことが広がりつつあり、その方向について法曹実務家からも理解が示されていることからは当然の帰結なのかもしれません。

また、職務行為基準説についてですが、国家賠償の違法性判断については一般的に職務行為基準説だといわれていますが、行政庁による実体法規違反の行為については実質的に公権力発動要件欠如説をとっているといわれています。

租税法律関係は租税法律主義から、明確に要件が定められているために過誤がある場合には実体法規の違反になってしまうことがかなりあるように思われます。

事実このケースも、冷蔵倉庫であることは明らかなのに間違えていたというどうみても違法と評価される場合でした。

よって実際には、国家賠償請求権の時効まで租税法律関係について争うことができるという極めて厳しい結果になる可能性があるように思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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