東証一部上場の事務機器・家庭用機器メーカーであるシルバー精工が、監査役の解任議案を定時株主総会に提案することを公表しました。
監査役の解任の議案に関するお知らせ(証券コード:6453 | IR 書類ナビゲータ)
理由としては、適格性を欠いているからとされています。
当然ですが、当の監査役は社外監査役です。
何が背景事情があるように思われますが、事情を存じませんのでさておくことにします。
基本の確認ですが、監査役も含めて役員の解任をするには、株主総会決議でもっていつでもできます。
会社法
第339条(解任)
役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
役員の意義については、以下の規定で定義がされています。
第329条(選任)
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
解任の規定に戻りますと、役員すべてに対して解任の規定は共通になっているわけですが、監査役だけは他とやや異なります。
第343条(監査役の選任に関する監査役の同意等)
取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
2 監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。
3 監査役会設置会社における前二項の規定の適用については、第一項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは「監査役会」と、前項中「監査役は」とあるのは「監査役会は」とする。
4 第三百四十一条の規定は、監査役の解任の決議については、適用しない。
341条には以下のように、解任は原則、株主総会の過半数でできることが定められています。
第341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
よって、監査役の解任の場合には、過半数でよいという規定の適用はなく、特別決議が必要です。
第309条(株主総会の決議)
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
(略)
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)
この二重になっているような規定の仕方は立法技術としてどうなのかやや疑問がないでもないですが、とにかく監査役の解任に決議要件を重くしているのは、監査役の地位の安定化を図ることで監査の実を挙げるためです。
よって、本件でも特別決議が必要になることから、やや高いハードルがあるといえます。
株主構成によっては会社側から説明を尽くさないと成否は流動的になるかもしれません。