東京地裁、洋麺屋五右衛門のアルバイトの変形労働時間制を無効と判断


労働基準法における労働時間規制の基本は、1日8時間週40時間となっていますが、これだと普通の事務仕事などではなく、労働時間に時期的な偏りが生じる業種では、頻繁に時間外労働をしていることになってしまいかねません。

そこで、変形労働時間制というのがあり、大まかに言うと平均して上記の労働時間になるなら、労働時間に偏りが生じても良いことが認められます。

労働基準法

第32条の2

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

②使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

このような変形労働時間制をアルバイトに適用していたところ、残業代を支払わない便法に過ぎないとして使用者を訴えたという事件がありました。

「変形労働時間制」残業代未払いで無効判決 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2010年4月7日)

忙しさに応じて労働時間を調整する「変形労働時間制」を理由に残業代を支払わないのは不当だとして、スパゲティ店「洋麺屋五右衛門」の元アルバイトの男性(28)が同店を展開する「日本レストランシステム」(東京)を相手取り、未払い残業代など約20万円を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であり、藤井聖悟裁判官は、同社に時効分を除いた約12万円の支払いを命じた。

判決によると、同社では1か月単位の変形労働時間制を導入し、1日8時間を超えて働いた場合でも残業代を払わなかったが、半月分の勤務表しか作っておらず、「労働基準法の要件を満たしていない」として、同社の変形労働時間制は無効とした。

(略)

変形労働時間制については、就業規則で基本的な定めをおいた上で、勤務表等で具体的に特定することが必要とされています(昭和63年3月14日基発150号)。

そうしないと平均して労基法32条を守っているのかわからなくなってしまうからです。

本件においては、報道によると勤務表をきちんと作成していなかったということであり、特定をしていなかったことになります。

そこから、変形労働時間制を無効として、32条の法定労働時間にひきなおして計算した超勤手当て等の支払いを命じています。

実態はわからないのですが、労働時間規制の潜脱に変形労働時間制が使われている例が潜在的に多いのかもしれません。

ちなみに私も現場時代は変形労働時間制で勤務していましたが、極めて厳格に労働時間の特定をして勤務表を作成していました。本来はこういった法令順守をきちんとしなければいけないところですが、いい加減なところも多いことが伺われます。

裁判例情報

東京地裁平成22年4月7日判決

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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