最高裁、固有必要的共同訴訟であるのに合一的確定に反する判断をした原審に対して上訴された場合、不服申立てがされていない分についても合一的確定に必要な限度で不利益変更できると判示


またもやややこしいタイトルで申し訳ありません。

全文は非常に短いのですが、色々と難しい点を含む判決であるために適格なタイトルをつけるのが難しい判例が出ました。

 

民事訴訟法の上訴のところで出てきますが、不利益変更禁止の原則があります(根拠は民訴法296条になり、上訴でも313条から控訴の規定が準用されるので同じく妥当します)。

これは、上訴した場合、不服申し立ての限度でしか審判の対象とならないために、上訴した側はそれまでよりも負けるということがないために、安心して上訴できるというものです。

もっとも、相手も上訴してきた場合には、全部が審判の対象になりますので、原判決よりも不利益になることはあります。あくまで自分の行為に主眼をおいた原則に過ぎないものです。

 

基本的な知識ですが、この不利益変更禁止には例外があり、上訴人の地位に立っていないのに不利益に変更される場合がいくらかあります。

その中の一つに、独立当事者参加訴訟で上訴がされた場合があります。

独立当事者参加訴訟は、合一的確定が要請されますが、共同関係がないために三面関係のうち一部が上訴されない場合がありえます。その際、上訴審で原判決を変更しようと思うと、上訴されておらず審判の対象となっていない部分も変更しないと合一的確定ができない場合がありえます。

そこでその場合は、必要な限度(あらゆる場合に変更が必要になるわけではありません)で上訴されていない部分も不利益に変更することができるというのが判例です。

最判昭和48年7月20日民集27巻7号863頁

 

このような合一的確定のために不利益変更できるということが固有必要的共同訴訟でも妥当するという判決が出ました。

最高裁判所第三小法廷平成22年03月16日判決 平成20(オ)999 遺言無効確認等請求事件

しかし、ここで変に思われると思います。

固有必要的共同訴訟なら、合一的確定のために上訴されれば、全員が上訴に移審するはずなので、三面訴訟の独立当事者参加のような場合は起きようがないのではないかということです。

実はこの事件は、原審が本件訴訟を固有必要的共同訴訟だと捉えずに、合一的確定をさせなかったために、上訴審である最高裁が固有必要的共同訴訟であることを明らかにして合一的確定をさせる必要が出てしまったという事件なのです。

固有必要共同訴訟とは何かが一義的に明らかではないために起きてしまった事態といえるようです。

 

本件の紛争は相続をめぐるものです。

一審原告(控訴人・被上告人)XとY1・Y2(一審被告・被後訴人・上告人)は、亡Aの子なのですが、Y2が遺言書を偽造したとして、XがY2については相続欠格者であることの確認、Y1に対しては不明なのですが別の理由から、共に相続人ではないことの確認を求めた事件です。

一審は、請求を棄却したためXが控訴したところ、原審はY2に対してX勝訴に変更したものの、Y1に対しては控訴の利益がないとして却下してしまったのです。

これに対して、Y1、Y2が上告をしたのが本判決です。

最高裁は、本件について、相続人が誰かという問題であるという点から、共同相続人間における相続人たる地位不存在確認の訴えは固有必要的共同訴訟であるとした最判平成16年7月6日民集58巻5号1319頁を引用して、固有必要的共同訴訟であるとしました。

そのために合一的確定の必要があるとして、なぜかXが原判決のY1に対する敗訴について上告していないのですが、例外的に不利益変更がなしうるとしました。

原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができると解するのが相当である

不利益に変更するにしても、審判の対象になっていないと思っている当事者(本件ではY1)にとっては手続きを害することになりかねませんが、最高裁は以下のように述べて問題がないことをきちんと確認しています。

記録によれば,同Y2及び同Y1は,第1審及び原審を通じて共通の訴訟代理人を選任し,本件請求の当否につき,全く同一の主張立証活動をしてきたことが明らかであって,本件請求については,同Y2のみならず,同Y1の関係においても,既に十分な審理が尽くされているということができる

 

なんとも難解な事態になっていますが、それは本件がやや不可解な経緯をたどっているからだと思われます。

現時点では原判決等を見ることができないのでなんともいえないのですが、なぜ本件で固有必要的共同訴訟だと判断されなかったのかがそもそもよくわかりません。

最高裁は要するに相続人が誰かという問題だと整理して判示しましたのでそう思ってしまいますが、相続欠格に当たることの確認と相続人でないことの確認であるために別物と判断されたのでしょうか。

また、控訴審判決に対してY1が上告しているのに、敗訴したXが上訴しているというのもよくわからない点があります。Y1はXの控訴を却下した判決に対して上告しているということは本案判決を求めているということなのでしょうが、相続人であるかを争っているのに、Xが上告しなかったことがよくわかりません。上告していればこの判示は出なかったと思われます。

 

やや機能する場面が微妙であるように思われないでもないですが、固有必要的共同訴訟であるか自体が争われる事態は今後も当然ありますので、そのような場合に機能することがあるということなのだと思われます。

なお、最高裁のウェブサイトにアップされているこの事件の判例全文には誤植があるように思われます。

この記事を書いている時点での判例全文では、2ページの4行目に「Y2」とあるのですが、これは「Y1」だと思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “最高裁、固有必要的共同訴訟であるのに合一的確定に反する判断をした原審に対して上訴された場合、不服申立てがされていない分についても合一的確定に必要な限度で不利益変更できると判示

  1. H22.03.16:遺言無効確認等請求事件@固有必要的共同訴訟と不利益変更

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