ソフトウェア開発委託取引の諸問題


論文のようなタイトルをつけてしまいましたが、ソフトウェア開発委託取引(またはシステム開発委託取引ということもありましょう)に生じうる法的問題を包括的に取り上げるわけではなく、先日このブログで取り上げた「JAPAN LAW EXPRESS: フューチャーアーキテクト、日東電工に対して請負代金請求訴訟を提起」を契機として、簡単な検討をしてみるものです。

 

民法の基本からいくと、請負の場合、仕事が完成しないと報酬をもらえません。

民法

第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

第633条(報酬の支払時期)

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。

ただ、住宅の建築の請け負った大工とかの場合だと、住宅の完成というのは比較的わかり安いものがあります。よって、建築請負だと完成はした上で瑕疵担保の問題が起きることが多いわけです。

しかし、本件で扱うソフトウェア開発委託は、民法の契約だと何に当たるかがまず問題となります。

非典型契約だとか混合契約だとか主張されることもあり、個別具体的な契約内容によってはそれらになることもありえないではないですが、一般的には請負と認定されることが多くなっています。

しかし普通の請負とは異なる点があり、建築請負と違って、何を持って完成とするかが明らかではないということです。

これはものがものであるため発注側が、完成したことを確認をしないといけないからです。この確認は検収と呼ばれています。

しかし、ここで直ちに問題になります。発注側が検収をしてくれないといつまでたっても完成しないということになってしまうからであり、請負側は大変弱い立場に立たされてしまいます。

このことは以前から指摘されており、検収について開発委託契約で以下のような内容を盛り込んで蒸気のような紛争の発生を避けるべきとされています。

  • 検収期間を限定する
  • 検収期間に検収を終了させられない場合には、期間終了と同時に検収が終了したとするみなし規定をおく

より

上記参考文献では、上記の見解に依拠して、検収期間の限定とみなし規定をおいたモデル契約を作成しています。このような契約が当事者間で取り交わされていたかがまず問題です。

仮にこのような契約条項を盛り込んでいたのなら、検収をしないということは直ちに、発注側の債務不履行、少なくとも協力義務違反を構成するために、請負側に有利ということになります。

業界の実情について私は疎くわからないのですが、一般的な発注側と請負側との関係を考えると上記のような検収の規定まで設けていないかもしれません。もっとも検収について発注側に協力義務があると認定できるだけの条項は設けていると思われます。

裁判になって判決まで行った例を見る限り、検収でもめるということはあまりないというのが現実ではないかと思われます。

 

ソフトウェアの開発委託で裁判例になっているものは、納入後に瑕疵があることがわかったという検収後に問題となった場合か、発注側とのやり取りがうまくいかず完成に至らずに時間がたってしまったという場合が目立ちます。

前者の、瑕疵をめぐる問題では、まず仕様の確定をして、それと比較して、瑕疵があるのかについて認定をすることになります。フューチャーアーキテクトの件も、請負側が代金の請求をしていることから、このタイプの問題なのではないかと想像しています。

後者の作業が進まない場合には、発注側が解除したとして訴訟を提起していることが多くなっています。そのため、うまくいかなかったことについてどちら側に問題があるのかという過失相殺の争いになっているように見受けられます。

仕様等をはっきりさせておけば紛争にならないのにと思ってしまいますが、そもそもはっきりさせることができない特徴を有するものであることは否定できないことから、紛争になってしまうのは、事柄の性質上やむをえない点もあるのかもしれません。もっとも、業界の慣習にもう少し工夫するべきところもあるように思えるのも確かです。

いくつか裁判例を検討しましたが、事案の特状が作用している要素が大きく、「ソフトウェア開発だからこうだ」という一般論はあまりなく、請負の考え方にソフトウェアの特質や個々の契約や実際の経緯を当てはめて考えてみるしかないのではないかといった感じがします。

網羅的に論点を検討すると際限なく広がるので、目次的なことしかかけませんが、上記のような感じになります。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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