マンションを所有していても住んでおらず、他人に貸しているなどという所有者は結構いるかと思いますが、そうなるとマンション管理組合の現実の活動に参加することはなく、いわばただ乗りしてしまうことになります。
このような事態は不公平だとして、不在のマンション管理組合員に組合費のほかに上乗せして課金をすることを規約改正でもって行ったというマンションがあり、支払いを拒んだ不在管理組合員がいたために訴訟になった事件で最高裁判決が出ました。
最高裁判所第三小法廷平成22年01月26日判決 平成20(受)666 協力金請求事件
このような場合に問題となる条文は建物区分所有法31条です。
建物の区分所有等に関する法律
第31条(規約の設定、変更及び廃止)
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。
マンション管理組合の規約は4分の3の多数決で改正等ができるのですが、多数決で一部の組合員の利益を損なってはいけないということで制定できる内容に制限を加えているのが1項後段です。
一部組合員に特別の影響を及ぼすときは承諾がないと有効ではないとされています。
この規定から行くと、不在組合員の負担を多めにする規約は違法になりそうに思えます。
しかし、最高裁は本件の協力金は31条1項後段に反しないとしました。
まず、31条1項後段の解釈なのですが、すでに判例があり、少しの違いも設けてはいけないというものではなく、合理的な範囲内なら一部組合員に違いがあってもかまわないとされています。
「規約の設定,変更又は廃止が一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは,規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該団地建物所有関係の実態に照らして,その不利益が一部の団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう
よって、受忍限度を超えないかと検討するわけですが、管理組合に参加しないことによる不公平について、この管理組合は役員に対して報酬を出すことにもしてしまったために、これで解消されると原審は判断していました。
しかし、最高裁は、役員以外にも管理組合の活動には参加することから、不公平は役員に対する報酬の支払いですべて補填されるものではないとして、協力金を課すことの必要性合理性は否定できないとしました。
その上で、支払いを拒んでいるのは、不在組合員の中のごく一部であることも指摘して(下線を引いているくらいです)、31条1項後段には該当しないとしました。
必要性合理性が肯定できるのに加えて、多くの不在組合員も任意に払っているという事実に配慮をしている判断であることが伺われます。
同じような問題を抱えるマンション管理組合は多いと思われ、この判例の与える影響はかなり大きいのではないかと考えられます。