KDDIのJ:COMへの資本参加でスキームの金商法上の適法性が問題に


KDDIがケーブルテレビ大手のジュピターテレコムに資本参加することが発表されましたが、そのスキームが単純な株式の取得ではなかったために金商法に照らして適法なのかが問題となっています。

株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について | 2010年 | KDDI株式会社

まず、単純に今回の資本参加の目的をまとめるとKDDIがJ:COMの37.8%の議決権を握るということです。

すると株券等所有割合が3分の1を超えることになります(議決権と金商法の株券等所有割合は同じではありませんが、本件では3分の1を超えます)ので、金商法の3分の1ルールがかかってくるのではないかと思えます。

金融商品取引法

第27条の2(発行者以外の者による株券等の公開買付け)

その株券、新株予約権付社債券その他の有価証券で政令で定めるもの(以下この章及び第二十七条の三十の十一(第四項を除く。)において「株券等」という。)について有価証券報告書を提出しなければならない発行者又は特定上場有価証券(流通状況がこれに準ずるものとして政令で定めるものを含み、株券等に限る。)の発行者の株券等につき、当該発行者以外の者が行う買付け等(株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この節において同じ。)であつて次のいずれかに該当するものは、公開買付けによらなければならない。ただし、新株予約権を有する者が当該新株予約権を行使することにより行う株券等の買付け等及び株券等の買付け等を行う者がその者の特別関係者(第七項第一号に掲げる者のうち内閣府令で定めるものに限る。)から行う株券等の買付け等その他政令で定める株券等の買付け等は、この限りでない。

一 取引所金融商品市場外における株券等の買付け等(取引所金融商品市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による株券等の買付け等及び著しく少数の者から買付け等を行うものとして政令で定める場合における株券等の買付け等を除く。)の後におけるその者の所有(これに準ずるものとして政令で定める場合を含む。以下この節において同じ。)に係る株券等の株券等所有割合(その者に特別関係者(第七項第一号に掲げる者については、内閣府令で定める者を除く。)がある場合にあつては、その株券等所有割合を加算したもの。以下この項において同じ。)が百分の五を超える場合における当該株券等の買付け等

取引所金融商品市場外における株券等の買付け等(取引所金融商品市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による株券等の買付け等を除く。第四号において同じ。)であつて著しく少数の者から株券等の買付け等を行うものとして政令で定める場合における株券等の買付け等の後におけるその者の所有に係る株券等の株券等所有割合が三分の一を超える場合における当該株券等の買付け等

(以下略)

基本の確認ですが、上記の金商法27条の2第1項第2号のいわゆる3分の1ルールとは、有価証券報告書を提出している会社(要するに公開会社を念頭にしているとみてよいです)の株式について、市場外で著しく少数の者(これは10名以下です)から3分の1を超える割合を取得するときは、公開買付によらないとけないというものです。

これは、相対取引で終わってしまうと他の一般株主に不測の事態になることから、参加の機会を確保するためのものです。

KDDIはLGIという会社の保有分の譲渡を受ける意向のようですので、すると3分の1ルールの適用を受けることになりそうです。

しかし、KDDIのスキームは複雑にできており、公開買付をしないですませるようなのです。

それは、LGIの子会社でJ:COMの株式を保有している持株会社の株式を取得することで実質的に議決権を得るというもので、J:COMにとっては株主は変わらないという形をとるため、直接的に買収が行われるのは有価証券報告書の提出はおろかほとんど実態のない持株会社であるという点です。

よって、上記の3分の1ルールは、いわゆる公開会社の株式を3分の1以上市場外で取得する際にかかってくる規制のため、これに抵触しないというわけです。

しかし、いきなり支配権の大変動があるわけであり、一般株主にとっては実質的に3分の1を取得した株主が登場したようなものです。よって、実質的に見て3分の1ルールの潜脱ではないかという見解が出てきています。

KDDIについているのは、世界的に著名なスキャデン・アーブスであり、適法であると判断しているとされています。

報道では、西村あさひの太田洋弁護士も、結論としては違法とまではいえないのではないかとされているようです。

太田弁護士の見解については以下のリンク先をどうぞ。

焦点:KDDIのJCOM出資手法は適法か、TOB解釈で専門家も二分| Reuters

早稲田の上村教授は違法の立場をとられており、実質解釈すべきだとされています。

しかし、金商法は行政法的な規制ですし、ルールの明確性を無視することも難しいと思われます。

また、法人が株式を取得している場合、その法人が買収されれば株主が突然変動してしまうことはあるわけで、この場合、株主は変動するにしても持分は従前のままであるわけですから、一般株主に生じる事態はいきなり支配株主が登場する事態とは同士できないかと思われます。

よって一概に3分の1ルールの潜脱だと言うことはできないと思われます。

もっとも、本件においては、現時点でのJ:COMの支配株主である住友商事とLGIの合弁のパートナーシップが解消を迎え、このLGIとKDDIの取引と前後して、支配株主の主体と持分の大きな変動が生じます。この事態を重く見ると一般株主に、参加の機会が必要という考え方も理解できます。

しかし、それを支えるだけの構成が金商法にあるかといえば難しいのではないかと思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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