東京地裁、オリンパスが内部通報をした社員を配転したのを適法と判断


内部告発という言葉が定着してしばらくたちますが、会社の社内から告発することが社会的に推奨されるようになっています。

内部告発というと外部に対する公表のような意味になりますが、法的には公益通報者保護法が制定され、公益通報という概念が定義されており、これをした社員を解雇したり、不利益取り扱いをしてはいけないとされています。

この公益通報とは外部に対する公表だけではなく、社内的な通報も含めているのですが、それをしたことで報復の配転を受けたと社員が主張して、配転命令を無効確認を求めた訴訟で、東京地裁は、配転が不利益ではないことのほか、公益通報者保護法に該当する公益通報に当たらないとする判断をしました。

BizPlus: 最新:配置転換、不当と認めず 東京地裁、オリンパス社員の内部通報(日本経済新聞2010年1月16日)

精密機器メーカー「オリンパス」の社員、浜田正晴さん(49)が、社内のコンプライアンス(法令順守)窓口に上司を通報した結果、配置転換など報復を受けたとして、配転命令の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁(田中一隆裁判官)は15日、「命令が報復とは認められない」として請求を棄却した。
田中裁判官は判決理由で、「勤務地は変わらず賃金減額を伴う降格もない。配転に業務上の必要性もあった」として、配転命令に会社の権利乱用はなかったとした。浜田さんは内部通報後に配転されたことが公益通報者保護法違反に当たると主張したが、「同法が定める通報内容だったとは認められない」と指摘した。

上記の報道だと、通報の内容が不明ですが、他の報道によると以下のような内容であった模様です。

時事ドットコム:内部告発のオリンパス社員敗訴=配転命令違法と認めず-東京地裁(時事通信2010年1月15日)

(略)

訴えていたのは浜田正晴さん(49)。浜田さんは2007年、上司らが機密情報を知る取引先の社員を引き抜こうとしているのを知り、社内のコンプライアンス室に通報。その後、精密検査システムを販売する部署のチームリーダーから、新事業のための研究職に配置転換された。
田中一隆裁判官は、オリンパスは社員引き抜きの違法性を認識しておらず、配転によって内部告発を制限する目的があったとは考えられないとして、浜田さんの告発は公益通報者保護法の保護対象にはならないと判断した。
その上で、勤務地は変わらず、減給を伴う降格もないなど配転による不利益はわずかで、命令は権利乱用には当たらないと結論付けた。

(略)

判決全文に当たっていないのですが、法律構成は大きく二つで請求したものと思われます。

第一に通報したことを理由として配転をしたのは権利濫用で無効であるとする構成、第二にその配転は公益通報者保護法で禁じられた不利益取り扱いで無効であるとするものだと考えられます。

 

配転命令権の濫用の構成については、労働契約法で配転については条文が設けられませんでしたが、東亜ペイント事件から

  • 業務上の必要がない場合
  • 不当な目的、通常甘受すべき程度を著しく超える程度の不利益を課す場合

には配転命令権の濫用となるとされます。

上記報道によると、これに照らして検討がされたことが伺われ、報復目的ではなく不当な目的がないこと、不利益がわずかであり「通常甘受すべき…」を満たしているという評価をしたことが伺われます。

当然のことながら、上記報道のほかに業務上の必要性があることも認定をしていることと思われます。

 

公益通報者保護法についてですが、同法では保護される何でもかんでも会社の秘密を暴露すればよいのではなく、保護される公益通報は限定されています。

第2条(定義)

この法律において「公益通報」とは、労働者(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者をいう。以下同じ。)が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、その労務提供先(次のいずれかに掲げる事業者(法人その他の団体及び事業を行う個人をいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)又は当該労務提供先の事業に従事する場合におけるその役員、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該労務提供先若しくは当該労務提供先があらかじめ定めた者(以下「労務提供先等」という。)、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関又はその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第三号において同じ。)に通報することをいう。

一 当該労働者を自ら使用する事業者(次号に掲げる事業者を除く。)

二 当該労働者が派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。第四条において「労働者派遣法」という。)第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)である場合において、当該派遣労働者に係る労働者派遣(同条第一号に規定する労働者派遣をいう。第五条第二項において同じ。)の役務の提供を受ける事業者

三 前二号に掲げる事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合において、当該労働者が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者

(略)

3 この法律において「通報対象事実」とは、次のいずれかの事実をいう。

一 個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。次号において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実

二 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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