労働法の基礎的な概念である労働者の概念は、労基法上の労働者、労組法の労働者などと法律ごとに違う概念となっています。
そのうちの一つである労災給付が受けられるかという労災保険法上の労働者の概念がありますが、このたび家業を手伝っていた同居の親族が労災給付を求めたのに対して、労働者と認められないとして不支給となった事件があり、処分の取消が争われて裁判になっています。
これに対して甲府地裁は、労働者性を認めて不支給処分を取り消しました。
同居の親族、労働者と認定 甲府、労災不支給取り消し – 47NEWS(よんななニュース)(2010年1月12日)
(略)甲府地裁は12日、男性を同法上の労働者と認め、療養・休業補償を給付しなかった国の処分を違法として取り消した。
(略)
判決によると、中村さんは06年9月23日、住宅塗装作業中に2階から転落して腰の骨などを折り、甲府労働基準監督署に療養・休業補償の給付を申請。同監督署は中村さんは労働者と認められないとして不支給とした。当時、中村さんは両親と同居しながら、父が営む「中村左官工業」で兄や数人のアルバイトとともに働いていた。
太田武聖裁判長は判決理由で、同法上の労働者と認められるかどうかは、使用者への従属性を重視するべきだと指摘。
上記で労働者の概念は法律ごとに別だといいましたが、労災保険法上の労働者は、労基法の労働者と同じだと通説判例はしています。
すると、「使用されて労働し、賃金を支払われているか」ということがメルクマールになり、使用従属性の判断基準として指揮監督下で労働しているか、報酬に労務対象性があるかを検討することになります。
上記記事の使用者への従属性を重視するべきだという指摘はこれをさしているものと思われ、法律構成に関しては通説判例に依拠した順当な判断がされたものと思われます。
上記で示した使用従属性のあてはめについては、記事からでは事実が不足しており、判断しかねる点があり、家業を手伝う同居の親族ならすべからく労働者だということにはならないと思われます。
判例・裁判例情報
甲府地裁平成22年1月12日判決