最高裁、東京都建築安全条例の安全認定の違法性が後続の建築確認に承継されることを肯定


本日、新宿区の通称タヌキの森に建築されているマンションをめぐる行政訴訟で最高裁が建築確認を取り消して完成目前のマンションの帰趨が問題となるという衝撃的な判決が出されました。

この事件ですが、違法性の承継を認めて建築確認を違法にしたという行政法的にも重要な判断を含んでいます。

最高裁判所第一小法廷平成21年12月17日判決 平成21(行ヒ)145 建築確認処分取消等請求,追加的併合申立て事件

行政法が必須になった新司法試験の元では広く知られている知識だと思いますが、建築基準法に接道義務というのがあり、大規模な建築物を建築する際には防災の観点から一定の幅の広さの道に敷地が一定の長さ以上接していないといけないという規制があります。

建築基準法

第43条(敷地等と道路との関係)

建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。

一 自動車のみの交通の用に供する道路

二 高架の道路その他の道路であつて自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令で定める基準に該当するもの(第四十四条第一項第三号において「特定高架道路等」という。)で、地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。同号において同じ。)内のもの

2 地方公共団体は、特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計。第四節、第七節及び別表第三において同じ。)が千平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により、前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、必要な制限を付加することができる。

上記の規定は長々と引用しましたが、大事なのは2項で、地方自治体は条例で法律より厳しい規制をすることが許容されています。

東京都では、東京都建築安全条例でそれを行っており、下記のような規制をしています。

東京都建築安全条例

東京都建築安全条例

(建築物の敷地と道路との関係)

第四条 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合は、その延べ面積の合計とする。)が千平方メートルを超える建築物の敷地は、その延べ面積に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。


延べ面積
長さ
千平方メートルを超え、二千平方メートル以下のもの
六メートル
二千平方メートルを超え、三千平方メートル以下のもの
八メートル
三千平方メートルを超えるもの
十メートル

2 延べ面積が三千平方メートルを超え、かつ、建築物の高さが十五メートルを超える建築物の敷地に対する前項の規定の適用については、同項中「道路」とあるのは、「幅員六メートル以上の道路」とする。

3 前二項の規定は、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、適用しない。

上記の規定から、東京都では、4条3項の通称安全認定がなされると、東京都独自の接道義務の規制は適用されないことになります。

接道義務のほかに、色々な法的規制がありますが、それらを満たした建築であることが確認されると、建築確認というものが出されます。

これが出ると建築に取り掛かることができるわけです。

さて、このタヌキの森事件では、当該マンションは延べ面積が2820平方メートルなので、接道義務としては8メートルが求められるのですが、幅4メートルの通路が34メートル伸びて外とつながっているという形になっており、いうなれば4メートル接しているだけでした。

そこで3項の安全認定を受けて、建築確認を得たのですが、地元住民から建築確認が違法であるとして取消訴訟が提起されたという事件です。

安全認定を出した理由は、4メートルしか接していないとしても敷地に中庭があり、安全性は十分であるという理由なのですが、この認定の当否が争われ、安全ではないとして安全認定が違法であり、それに依拠した建築確認も違法であると主張されたわけです。

ここで、行政法で有名な論点の一つである違法性の承継が争点となりました。

建築確認を争っているわけですが、その違法であるとする理由は安全認定に違法があるというものです。しかし、この安全認定について原審は処分性を肯定したのです。

処分性が肯定されると、その処分について抗告訴訟を起こすことができることから、原則的に違法事由の主張は切断されます。

原審はそれでも安全確認の違法を理由に建築確認も違法であるとして、建築確認を取り消したのですが、上記の原則論の立場から新宿区が建築確認の取消訴訟に安全確認の違法性は承継されないとして上告に

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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