穴吹工務店前代表取締役、自らを解職した取締役会決議の無効を主張


穴吹工務店の件の続報です。

これまでの経緯については以下の関連記事をどうぞ。

JAPAN LAW EXPRESS: 穴吹工務店、社長以外の取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集を決めるも、その後に撤回

JAPAN LAW EXPRESS: 穴吹工務店、東京地裁に会社更生法の適用を申請

 

会社更生法申請を決めた取締役会で解職された元代表取締役が会見して、当該取締役会決議の無効を主張しました。

「会社更生法申請は無効」 穴吹工務店前社長が会見(日本経済新聞2009年11月26日)

会社更生法適用を申請した穴吹工務店(高松市)の穴吹英隆前社長は26日、高松市内で記者会見し、申請手続きと自身の社長解任を決めた取締役会の無効を主張した。東京地裁に申請を却下するよう、上申書を提出したことも明らかにした。

(略)

報道によると、代表権のある代表取締役の召集がないままに開催して代表取締役を解任したとのことです。

よって、召集手続きに瑕疵があり、それは取締役会決議を無効とするものであるという趣旨のようです。

穴吹工務店のウェブサイトはまだ今回の役員の異動を反映していないようで、それによると代表権は代表取締役一人にしかなかった模様です。

以上を前提として、今回の件を検討してみましょう。

会社法によると、取締役会の召集権は原則として、各取締役にあります。しかし、特定の取締役に召集権を与えることもできます。その場合には、他の取締役は召集権をもつ取締役に召集を請求することになります。

会社法

第366条(招集権者)

取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。

2 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。

3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。

召集権に関して、穴吹工務店がどのような定めをおいているのかわからないのですが、代表取締役だけが召集できるとしているとしてもおかしくはないと思われます。

すると、勝手に召集権のない取締役が召集したことになります。しかし、366条3項などに照らすと、請求に応じないならその取締役が召集できますので、召集権者の定めはそれほど重大な意味を有していないと考えることができます。よってそれほどの瑕疵だとはいえないのではないかと考えられます。

次に問題になるのは、召集手続です。

第368条(招集手続)

取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

期限を切って召集通知を発することが定められており、しかも判例(最判昭和44年12月2日民集23巻12号2398頁)でこの召集通知は取締役全員に対してしないといけないとされています。しかし会見によると、元代表取締役には召集通知がなかったようであり、それが事実なら明らかな会社法違反があります。

一部取締役に対して召集通知漏れがあると、上記と同じ判例により、原則、その取締役決議は無効となります。しかし、当該取締役が参加しても決議の結果に影響がないと認められる特段の事情があるなら、決議は有効になります。

本件の解職がどれほどの票数だったのかによりますが、これまでの経緯を考えると全会一致でもおかしくないところです。よって、本件においては、当の代表取締役が取締役会に参加していても結論が変わらなかったといえそうであり、特段の事情が肯定できる可能性はかなり高いのではないかと思われます。

しかし、個別に分けて検討すると何とかなる感じがしますが、召集権の問題と召集通知の問題という二件の瑕疵が積み重なっていると、まさにこれに当てはまる先例がないこともあり、やや流動的であることも否定できません。

もっとも手形の決済日が迫っていたという事実もあり、この点からやむをえないことだと判断することもできるかもしれません。すると瑕疵の程度を低く評価する方向に作用するかもしれません(どのような根拠から構成するのかはよくわかりませんが)。

しかし元代表取締役は、この点についても資金の目途をつけていたと反論しています。

よって、決め手を欠くと評価するほかないのですが、代表取締役がいたら取締役会で解職できたかという点が問題になります。

代表取締役はその地位ゆえに影響力は大きく、取締役会決議の単なる一票に過ぎないということはできません。そもそも本件は解職決議であるので当の代表取締役は特別利害関係取締役にあたり、議決権を行使できません(369条2項)。よって評価するのは、人間的な意味での影響力になります。

この点の事実はわからないのでなんともいえないのですが、代表取締役が自分以外の全取締役を解任しようとしていたことなどから考えると、全員反対派ということになるでしょうから、代表取締役が取締役会の場にいたとしても結論は変わらなかった可能性が高いと思われます。

よって、全体を通して考えると、解職と新しい代表取締役を選任して会社更生法の申請を決めた取締役会決議は、瑕疵がいくらかあることを考慮しても、有効とすることができるのではないかと思うのですが、どうでしょう。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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