最高裁、北海道拓殖銀行事件で商法の特別背任における任務違背について判断


判例が出てから少したっていますが、取り上げます。

破綻してしまった北海道拓殖銀行の元代表取締役に対する商法の特別背任の刑事責任を追及する訴訟で、最高裁が特別背任における任務違背について詳細な判示を行いました。

最高裁判所第三小法廷平成21年11月09日決定 平成18(あ)2057商法違反被告事件

あくまで刑事事件であり、取締役の義務違反として会社法の私法的側面の問題となる任務違背とは必ずしも同じではありませんが、非常に詳細な判示がされているので取り上げます。

Dグループは,本件各融資に先立つ平成6年3月期において実質倒産状態にあり,グループ各社の経営状況が改善する見込みはなく,既存の貸付金の回収のほとんど唯一の方途と考えられていたG地区の開発事業もその実現可能性に乏しく,仮に実現したとしてもその採算性にも多大の疑問があったことから,既存の貸付金の返済は期待できないばかりか,追加融資は新たな損害を発生させる危険性のある状況にあった。被告人A及び同Bは,そのような状況を認識しつつ,抜本的な方策を講じないまま,実質無担保の本件各追加融資を決定,実行したのであって,上記のような客観性を持った再建・整理計画があったも
のでもなく,所論の損失極小化目的が明確な形で存在したともいえず,総体としてその融資判断は著しく合理性を欠いたものであり,銀行の取締役として融資に際し求められる債権保全に係る義務に違反したことは明らかである。そして,両被告人には,同義務違反の認識もあったと認められるから,特別背任罪における取締役としての任務違背があったというべきである。

本来は経営判断ですので、結果責任を問われるというものではありませんが、上記のような事実から実質無担保の融資をして、融資先に再建の計画等が存在しているわけでもないのであれば、著しく合理性を欠くとしています。

これは私法的な意味での任務違背を検討する経営判断原則に照らしても任務違背があるということになりましょう。

銀行という業種における事例判断ではありますが、任務違背の概念について重要な先例となる判示だと思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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