東京地裁、NTT東日本の60歳定年制を適法と判断


タイトルだけ見ると、定年が問題になるのかと不思議に思われるかもしれません。

実は、高齢者雇用安定法という法律があり、65歳までの継続雇用義務が課せられているのです。

これだけきくと、60歳定年制は違法に思えますが、高齢者雇用安定法には代わりの措置が設けられていますので、どれに該当するのかが問題になるわけです。

またさらに高齢者雇用安定法に私法的効力があり、労働者が請求をすることができるのかという問題もあります。

今回、まさにこの点が争われた事件で判決が出ました。

東京地裁平成21年11月16日判決

NTT東の60歳定年制適法 東京地裁、元社員の請求棄却(日本経済新聞2009年11月17日)

NTT東日本の60歳定年制が、定年後の雇用確保などを事業者に義務付けた高年齢者雇用安定法に反するとして、昨年3月に同社を定年退職した元社員の男女10人が、社員としての地位確認などを求めた訴訟の判決が16日、東京地裁であった。渡辺弘裁判長は元社員側の請求を棄却した。

渡辺裁判長は判決理由で、同社が定年を60歳としつつも、定年前にグループ会社に移れば65歳まで雇用する制度を設けていると指摘。「原則65歳までの再雇用が保障され、同一企業グループでの高齢者の安定した雇用が確保される制度となっている」として、同法に反しないと判断した。

(略)

問題となる高齢者雇用安定法の規定は以下のとおりです。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第9条(高年齢者雇用確保措置)

定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一 当該定年の引上げ

二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

三 当該定年の定めの廃止

2 事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講じたものとみなす。

65歳までの雇用確保のために、定年の引き上げか、継続雇用制度、定年の廃止の3つのうちのどれかをしないといけないことになっています。

本件は、NTT東日本を60歳で退職した労働者が、この法律に従って社員としての地位の確認を求めたものです。

判決全文を見ていないので確言できないのですが、上記報道からは、NTT東日本は、定年前に移籍することで65歳まで継続雇用する制度を設けており、これによって上記のうちの2号を満たすとして、定年そのものは60歳のままにしていたことを適法と判断した模様です。

条文に戻りますが、この法律による企業の義務のうちポイントは2号の継続雇用制度であることは明らかです。

これは制度を設ければよいというものであり、希望したもの全員を雇用していなくても制度さえ設けていればそれでよいのです。よって、報道から読み取れる定年前に移籍すれば65歳まで雇用が維持されるという制度があるなら、2号を満たしているということは確かということになります。

雇用制度を設けているだけで実際にはほとんど再雇用していなくても適法なのですから、定年前に移籍しないとはいえ希望した労働者が継続して雇用されるなら、より適法といえるものと評価できます。

よって請求が棄却されたのは順当な結論ということができると思われます。

さて、上記で少し書きましたが、この事件にはさらに別の切り口がありえます。それは高齢者雇用安定法9条には私法的効力がないという議論です。

上記報道からは争点になったのかすらわからないのですが、9条1項2号という会社が制度を導入することと定年の延長・廃止が同列に並べられていること、9条に反したことの効果として10条に厚生労働大臣の指導助言が規定されていることから、この9条は公法的な規定であり私法的効力はないとする見解が有力です。

そのため、そもそも65歳までの雇用確保を労働者が使用者に求めることはできないという考え方があります。

本件がこの点についてどう考えているのかはわからないのですが、継続雇用制度について言及していることを考慮すると請求事態は認めているようですので私法的効力があるかのようです。

しかし、請求がそもそも確認請求で労働契約が終了しているかを検討することになり、そのためには定年の定めが有効であるかを確定する必要があるわけでその限りで検討しただけとも考えられます。よって、この私法的効力の点についてはブランクなのかもしれません。判決全文を確認したら追記したいと思います。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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