自らが大株主の会社へコンサルティング費用を支出させた東理HDの会長が逮捕される


東理ホールディングスの元代表取締役、利益相反取引になりそうなコンサルティング費用支出の件で特別背任で立件へのの続報です。

警視庁組織犯罪対策4課は、自らが大株主の会社へコンサルティング費用を支出した当時の代表取締役(現会長)を特別背任の容疑で逮捕しました。

東理HD会長を逮捕 特別背任容疑、17億円社外流出(日本経済新聞2009年11月16日)

東証2部上場の「東理ホールディングス」(東京・中央)の増資をめぐり、同社から約17億円を社外に流出させて損害を与えたとして、警視庁組織犯罪対策4課は16日、同社会長の福村康広容疑者(53)=東京都世田谷区=を特別背任容疑で逮捕、同社本社などの家宅捜索を始めた。

(略)

逮捕容疑は社長だった05年1~3月、東理HDが行った第三者割当増資に関するコンサルタント費用の名目で、自らが大株主の東京都内の教材販売会社「キーネット」(解散)に約17億6千万円を支出し、東理HDに損害を与えた疑い。(11:46)

この逮捕にともなう報道で、不可解な支出の理由が報道されています。

上記のリンク先の記事にはないのですが、16日の日経夕刊によると、コンサルティング先「キーネット」という会社の累積赤字の解消が目的だったとされています。

この会社には累積赤字があるのに加えて、会長が上場予定があると持ちかけて増資を募ったものの慢性赤字であることから苦情が出ていたという事実があった模様です。

キーネットはコンサルティング費用で累積赤字を解消、その後解散したとのことです。

この事実を前提にして会社法の取締役の義務の点を考えてみます。

累積赤字を解消しただけで配当がないなら、株主が有限責任であり出資する義務があるだけなので、特段の利益はないと考えることもできるかもしれませんが、本件では累積赤字を解消した上であまりが出ており、それを利用して株式を譲渡して対価を得ている模様です。また、増資に応じた側からの損害賠償責任追及を免れていると考えれば、これも利益といえるでしょう。よって、コンサルティング契約を締結したことから間接的に利益を得ており利益相反取引の間接取引(356条1項3号)に該当すると考えられます。

コンサルティング契約締結時にキーネット側を誰が代表していたかによっては、直接取引にも該当する可能性がありますが、報道から行くと契約当時にはキーネットの社長は退いていたようです。

したがって、少なくとも間接取引には該当するように思えますので、東理側で利益相反取引の承認の取締役会決議をとっていたのかが問題となります。

また取締役会決議での承認にかかわらず、結果として損害となったのなら会長には会社に対する損害賠償責任が生じます(423条)。本件は融資したとかではないので損害になるかは、対価にふさわしい役務を得ていないということになるのでしょうか。

キーネットは実体のない会社だったようなので、役務もなにもないと思われますので、この点も肯定できるのではないかと思われます。

上記の任務懈怠は会長のものとなりますが、他の取締役も担当する職務にもよりますが、少なくとも監視義務違反の可能性があります。

容疑の内容が事実とすると、上場している会社でありながら、会社財産を私物化したことになります。これは大変な驚きであり、ガバナンスの点からは厳しく糾弾されねばなりませんし、ひいては資本市場の信頼を揺るがすことにもなりかねない事態だと思われます。もっとも最近、会社の私物化のような目に余る事態が相次いでおり大変嘆かわしい事態だと思います。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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