公法と私法の狭間で


最近、社債の私募が流行っているそうです。

私募での発行がよくされているのは転換権付の優先株式で転換価格の下方修正条項がついているもので、レッサーCBというそうです。
すぐにわかるように、これは既存の株式の価値を著しく希釈化します。
なんでこんなものを発行するかというと、経営不振企業や格付けのよろしくない企業が資金調達をするためで、第三者割当てになることが多くなります。
リスクの代わりとして下方修正条項がついているといったところなのが実態です。

このレッサーCBは1990年頃の誕生なのですが、最近、日本国内の上場企業もこういったものを発行するようになり、既存株式希釈化への懸念から、株価の急落が生じるようになっています。

このように活用の場が広がるにつれて法律界からは、その合法性に対して厳しい視線が強まってきました。
というのは、転換権がついており転換価格の下方修正条項があることから、新株の有利発行を規制している商法の趣旨を没却するものだからです。

発行されている背景には、合法とする意見を出す弁護士がいるのだと思いますが、商法の趣旨を重視する立場からは、この考え方には厳しい批判がなされ始めています。
日本商法において新株の有利発行規制は、極めて重大に扱われている原則なので、それを私募の社債の一条項で反故にするのは許されないという考え方から来るものでしょう。

しかし、新株の有利発行規制があるからといって、そのまま当然に下方修正条項を無効と考えることはできません。
この問題を解決するには、もう一段階の思考プロセスが必要で、商法の社債に関する規定が私法であるか公法であるのかの検討がいるように思います。

私法問題であるならば、極端な言い方をすれば、(公序良俗などに反しない限り)当事者自治の世界で、法律で禁止されていないことは自由にできます。
これに対して、公法問題であるなら、法律で許されていること以外はできないというのが原則になります。
この点を無視して考えると、完全な水掛け論になるので、いつになってもはっきりしたことを言えなくなってしまいます。

現在の議論から見ると、新株の有利発行となるかならないかの線引きが実務上確立しつつあるのを利用して、それに類推して考えるか、そうは見ないかといったやり取りのようで、賛否両論募集中といった感じに見えます。

当該規制が国家的関心なのか否かという点から、明快な切り方をしたほうがいいのではと思う次第です。
商法は民法の特別法という考え方から、私法であることに疑いを持たない方が多いのではないかと思いますが、商取引法についてならともかく、会社組織についての部分はオリジナルなので、私法と単純に理解することはできないと思います。

私見では、公法的規制の見地から、レッサーCBの合法性はかなり怪しいと思うのですが…。

いずれにせよ、もう少し見通しのよい議論がなされればいいのになと思うことがまた一つあったので取り上げてみました。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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