最高裁、米ジョージア州港湾局極東代表部から解雇された者が雇用契約上の地位確認等を請求した事件で制限免除主義を採用 主権免除を認めた原審を破棄


東京地裁、主権免除に関して制限免除主義を採用(2005.09.30)の上告審判決が出ました。(控訴審判決を取り上げるのは失念しておりました)

最高裁判所第二小法廷平成21年10月16日判決 平成20(受)6 解雇無効確認等請求事件

ジョージア州港湾局極東代表部に雇用されていて解雇されたものが雇用契約上の地位の確認と賃金の支払いを求めた事件で、被告に主権免除が認められるかが問題となった事件です。

最高裁はすでに主権免除に関して、最判平成18年7月21日民集60巻6号2542頁【関連エントリー:最高裁、主権免除に関して判例変更 諸外国と同じく制限免除主義を採用(2006.07.21)】で制限免除主義に判例を変更しています。

しかし、このジョージア州港湾局事件では、第一審では上記のエントリーで取り上げたとおり、制限免除主義を採用したのですが控訴審判決でひっくり返され請求却下になっていました。

控訴審判決は平成18年判決の後なのですが、一見すると判例に従わず、従来どおりの主権免除を認めたのには理由があります。

制限免除主義のもとでも外国国家との雇用関係のうち採用、雇用の更新、復職などは主権免除となるという国際慣習があるとされているのですが、控訴審はこの請求は、復職に関するものであるので、平成18年判決のもとでもなお主権免除になると判断したわけです。

最高裁はこれに対して、この事件は復職ではなく、主権免除条約に定められている安全保障に関係する場合のみに免除が認められる「解雇または雇用契約の終了に係るもの」であるとしました。

控訴審は国際慣習を参酌したわけですが、最高裁は国際慣習における当てはめに誤りがあるとしたわけです。

しかし、手続法は手続地法に依拠する以上、国際慣習が直接適用されるわけではありませんので、そこで最高裁はこの件での雇用契約の内容を検討をして、平成18年判決が主権免除が認められないとした「私法的ないし管理業務的行為」に該当すると判断しています。

よって、上記の国際慣習に関するくだりは結論を導くための直接必要な論理にはなっていません。控訴審の依拠した構成をしてもなお主権免除が認められる場合ではないということを言及しているに過ぎないと思われます。

したがって、この判例の意義は、主権免除が認められる「私法的ないし業務管理的な行為」の具体的な内容についての判断であるところにあると思われます。

しかし、労働法の観点から考えると、労働契約上の地位の確認といったらまさに復職を請求しているものです。ここから考えると、最高裁の言っていることはおかしいように思えてきます。

しかし、これは日本では司法的には解雇の金銭解決が認められていないため、仕方なく復職を前提とした請求を立てている面があり、この実質に配慮をした判断を示したといえるでしょう。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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