最高裁、貸金業者が借主の期限の利益喪失を主張することが信義則上許されない場合について二件の事例判断


何だかわからないタイトルで申し訳ありません。

サラ金の過払金請求で、請求を受けた貸金業者が、実は借主はすでに期限の利益を喪失しており、通常の分割弁済のつもりで返還してきたのは元本と遅延損害金であり、過払金は生じていない(または請求額よりも少ない)と主張した事案がいくつか出てきています。

この貸金業者の主張に対して、借主は期限の利益喪失とされる後でも、貸金業者の態度がはっきりしなかったので、通常の弁済であると信じていたのに、過払い金請求の段階になって言い出すのは信義則に反すると抗弁しています。

このような論点にかかわった事件で微妙に事実関係が異なる二件について最高裁は同日に判決を出して、結論をまったく逆にしました。

比較するとわかりやすいように思えますので、まとめて取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成21年09月11日判決 平成19(受)1128 貸金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件

最高裁判所第二小法廷平成21年09月11日判決 平成21(受)138 不当利得返還請求事件

便宜上、以下では上の方を第1事件、下の方を第2事件と呼びます。

第1事件では、期限の利益を喪失してからも貸金業者は特段の通告をせず、一括の弁済を求めることもなく、分割の弁済を受け続けたのですが、領収書兼利用明細書には、遅延損害金と元本に充当することがかかれており、期限の利益を喪失していることが実はわかるようになっていたという事実がありました。また、期限の利益を喪失しているにもかかわらず新たな貸付をしているという事実もありました。

しかし、最高裁は、一括弁済を求めるか、元本と遅延損害金の一部弁済を受領するかは貸主の自由であるとして、期限の利益喪失の主張をしないと思わせるような行為をしたとはいえないとしました。

追加の貸付についても、貸すかどうかは、同じく貸主の自由であるとして、従前の態度に反する行動とはいえないとしました。

以上を指摘して、期限の利益喪失を主張することが信義則に反して許されないとまではいえないとしました。

これに対して第2事件では、期限の利益喪失後の貸金業者の行動が異なります。

第2事件では、利息29.8%に対して遅延損害金36.5%と大きな違いがあるのですが、期限の利益喪失後でも毎月15日までに支払えば、遅延損害金が29.8%になるという約定があり、期限の利益を喪失していることがそもそも気づきにくくなっており、加えて期限の利益を喪失していた状況下における借主からの弁済額の問い合わせに対して、29.8%に依拠して計算した金額を答えたりしていました。

また、領収書兼利用明細書には、元本と利息に充当すると明記されており、遅延損害金も含まれていることがかかれていませんでした。

以上のような事実関係があり、期限の利益を喪失することはないと誤信しても無理からぬものがあるとして、貸金業者の主張を信義則で遮断しました。

本件は貸金業者が期限の利益喪失を主張できるのかについての重要な判断基準を提示する事例判断であると思います。

過払金請求は、社会問題にもなっている模様ですが、一方で不当利得法などの分野で、色々な判例を生み出しており、極めて深度化が進んできていることが改めてわかる一件です。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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