最高裁、事後的に過払金が生じたことだけをもって直ちに不法行為を構成するということはできないと判示


今年の9月の前半にはサラ金の過払金関係の最高裁判例が連続して出されたのですが、どれも理由をあまり述べずに短いものばかりです。

今回取り上げるのは、過払金を受け取ったことが不法行為になるかという点についてのものです。

判例により、みなし弁済の適用が認められず、過払金が生じていたことになると、不当利得になりますが、みなし弁済の適用があると認識してその認識を有するにいたったことにやむをえないといえる特段の事情がない限り、民法704条の悪意の受益者と推定され、利息をつけて過払金を返還しないといけなくなります。

第704条(悪意の受益者の返還義務等)

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

これだけで過払金問題の財産的解決には十分に思えますが、不当利得返還請求権には消滅時効がありますので、10年で消滅してしまいます。そこでかなり昔の過払金は不当利得構成では消滅してしまいます。

そこで過払金の受領を不法行為と構成してまだ時効が来ていないと主張して返還を請求した事件で最高裁判決が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成21年09月04日判決 平成21(受)47 不当利得返還請求事件

最高裁は、結果的に多額の過払金が生じても、そのことのみをもって不法行為を構成するということはできないとしました。

不法行為を構成するのは、特段の事情がある場合としており、以下のように言及しています。

不法行為を構成するのは,上記請求ないし受領が暴行,脅迫等を伴うものであったり,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたりしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は,当該貸金業者が過払金の受領につき,民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合において
も異なるところはない。

みなし弁済の要件を満たさないことは後からひっくり返されてしまった感じが強く、悪意の受益者ということも無理があるくらいですので、不法行為だったと評価するのはもっと難しい感じがします。よってこの判決のように判断するのももっともだと考えられます。

ここのところ、過払金返還請求を制限する判例が相次いでいますが、ゆれ戻しというよりは、当然の限界を確認しているに過ぎないと思われます。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ

 

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)