最高裁、宗教法人の所有する土地の明け渡しを求める訴えが法律上の争訟にあたらないとして不適法とする一方で興味深い判示も行う


民事訴訟法の基本的な論点ですが、法律上の争訟の問題があります。

そのうちの一つに、権利義務に関する争訟でも前提として宗教上の教義などに関する判断が必要になる場合にはすべて法律上の争訟にあたらず、請求は却下されるというものがあります。

これは蓮華寺事件以来、判例の扱いとしては確定しているものです。

ちなみに、教義が前提問題となる攻撃防御方法が出てくるのが、請求原因でも抗弁でも一律に訴え却下になるというところに特徴があります。

さて、このようなことが問題となるのは宗教法人の内部紛争が大半の場合なのですが、このたび最高裁で宗教法人が擯斥処分をした住職に土地の明け渡しを請求したという典型的な事件で最高裁判決が出ました。

最高裁判所第三小法廷平成21年09月15日判決 平成20(受)1565 土地明渡等,代表役員の登記抹消手続請求事件

この事件では、宗教法人側は「宗旨又は教義に異議を唱え宗門の秩序を紊した」という事由で処分を構成しているため、教義に立ち入らなければいけないとして、法律上の争訟にあたらないと当たり前の判断がされています。

これだけだと、過去の判例どおりの判断なのですが、この事件には注目される箇所があります。

この事件では、住職が本来は管長しか授けられない法階を勝手に授けたことが処分の直接の理由となっているのですが、この宗教法人には「宗制に違反して甚だしく本派の秩序を紊した」という懲戒規定もあることから、最高裁は以下のように述べています。

包括法人において,法階は,管長が叙任することとされているのであるから(管長及び管長代務者規程3条1項6号,法階規程1条2項),被上告人の上記行為が上記剥職事由に該当するか否かが問題となっているのであれば,必ずしも宗教上の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理,判断する必要はなかったものと考えられる。

しかし、宗教法人は上記の「宗旨又は教義に異議を唱え~」のほうを使っているので、それならば法律上の争訟にはあたらないとしたのでした。

宗教団体の内部紛争になると一律に法律上の争訟に当たらず、私法上の救済がないかの様な状況が続いてきましたが、本件では紛争の原因と当該法人の有している内部規定によって、司法審査の対象となることを示したといえ、意義深いことなのではないかと思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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