高裁レベルではじめて、賃貸借の更新料を無効と判断した大阪高裁平成21年8月27日判決の簡単な検討をしてみようと思います。
再掲になりますが、判決全文は京都敷金・保証金弁護団のウェブサイトで公開されておりますので、ご覧ください。
先日取り上げた京都地裁判決を前提として違いに注意してみていこうと思います。
Ⅰ 消費者契約法施行前の場合、公序良俗違反になるか
まず、この大阪高裁の案件はかなり長期の賃貸借であったため、消費者契約法の施行前からのものになります。これは京都地裁の事件では問題とならなかった点で、施行前に締結した賃貸借契約に基づく更新料に関しては、控訴人(原告)は民法90条違反を主張して不当利得であると主張していました。しかし、大阪高裁はそこまではいえないとして、否定しています。
Ⅱ 更新料の法的性質
この後は、検討の順番はやや異なるものの、枠組みは京都地裁判決と同じです。
以下では、更新料の法的性質の問題点に関する判示を見てみます。京都地裁判決と同じく、賃貸人が主張した正当化の理由ごとに検討しています。
1、更新拒絶権放棄の対価
大阪高裁判決でも、京都地裁判決でも言及された業として賃貸借を行う賃貸人には正当事由が具備されることはまずない以上、更新が強制されるので、更新拒絶権放棄の対価と考えることは困難だという理由を述べていますが、それに加えて契約条項にも注目して、いっそう補強しています。
それは賃貸人から更新拒絶の申し出期間が6ヶ月前までになっていることに注目して、賃貸借の期間が1年であることから、更新拒絶を申し出ることができるのは6ヶ月間しかなく、しかも正当事由が具備されることはまずないので現実化すると考えられないのにその対価として10万円を要するのは高すぎるとしています。
さらに契約文言に更新料をもって更新拒絶権放棄を結びつけるところがないことも指摘しています。
2、賃借権強化の性質
京都地裁判決では、正当事由が認められることはまずないので権利に変化がないとしていたのですが、大阪高裁はここのところでやや異なった判示をしています。
それは、正当事由が認められずに法定更新になってしまうと、借地借家法26条1項から期間の定めのない賃貸借になってしまうため、賃貸人がいつでも解約を申し出ることができるようになるが、それに比べると更新料を払うことで更新されて、期間の定めのある賃貸借になることは強化といえると判断しています。
しかし、そもそもの契約期間が1年間しかないので、借地借家法で認められる最短期間なので、更新料を払ってもこれになるだけでは権利が強化される程度はほとんど無視できるとして、賃借権強化の性質を否定しました。
3、賃料の補充の性質
この点については、当然に10万円全額を支払うことになっている点、中途で終了した場合に清算する規定がないことから後払いされる賃料の性質を持たないことは明白としています。
この後に、更新料を不払いをしても法定更新の要件を満たしているなら、債務不履行解除を認めるべき余地はないといって差し支えないとしています。
この点についてはやや引っかかるものがあったのですが、上記のように性質がよくわからないものであるから、債務不履行にはならないということなのでしょう。
そして最後に、更新料に関する慣習法、事実足る慣習は認められないとしています。
以上から対価性の乏しい給付であるとして、この後に続けて、消費者契約法10条に該当するとして無効としています。
最後には賃料を安く見せかけて誘引する効果があるとか、借地借家法の強行規定から目をそらせているなどと指摘しています。
全般的に、京都地裁判決よりも、より堅実な構成になっており、より説得力が増している感じを受けます。
ただ、慣習に関しては、やや引っかかるものがあるように思われます(もっとも更新料が広く授受されているとしてもなお無効とすることは可能です)。
賃貸人は上告する意向を示しているので最高裁の判断が注目されます。
賃貸更新料問題「無効なら家主破綻6割に」
今日の住宅新報で「更新料問題 無効なら家主破綻6割に」という記事がデカデカと出ていた。タイトルを見て「6割も破綻するわけね〜だろ!」とツッコミながら新聞を読んだら、