賃貸借の更新料を無効とした京都地裁判決全文が公開される


京都地裁、賃貸住宅の更新料を消費者契約法違反で無効と判示(2009.07.24)の続報です。

最高裁のウェブサイトで京都地裁判決の全文が公開されましたので検討してみたいと思います。

京都地判平成21年07月23日 平成20(ワ)3224 敷金返還請求事件

この件で問題となっているのは敷引特約と更新料の二点で、消費者契約法10条に照らして無効と判断して原告の請求を全部認容しています。

このエントリーでは更新料のところだけ検討します。

消費者契約法10条の条文は以下のようなものです。

消費者契約法

第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

10条の要件を検討する前に、まず本件が消費者契約法の適用を受けるかの確認を怠ってはいけません。

消費者契約法は消費者契約に関する規定をおいている法律で、事業者と消費者との間の契約が消費者契約と定義されています(2条3号)。

事業者とは法人すべてと事業をする個人のことです(2条2号)。消費者とは個人のことです(2条1号)。

本件の貸主は法人なのか個人なのかは定かではないのですが、物件がマンションですので個人であったとしても事業であることは明らかでしょう。京都地裁も弁論の前趣旨から簡単に認定しています。

そこで10条の要件ですが、上記の規定から分かるように、「民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であるか」と「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものか」の二点になります。

1、民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であるか

京都地裁は賃借人が賃料以外の支払を負担することは賃貸借契約の本質的内容ではないとしています。

その上で、更新料が賃料2か月分であるのに、賃料補充的な性格が乏しいこと、賃料補充の性格を認めるにしても支払時期が早いことから義務を加重するものであるとしています。

また、更新料が慣習化していると認める証拠はないとも付け足しています。

ここの部分についての判示は、民法所定の原則的な賃貸借に依拠している点が多分にあるように思われます。賃貸借契約で賃借人が支払わないといけないのは賃料だけだというのも敷金等は民法には規定がないことに根拠を有しているように思われますし、支払時期が早いので義務の加重になるという点も、民法の原則では賃貸借は賃料後払い(614条)であることを考慮しています。

しかし、敷金などは根拠はなくても広く行われていることですし、賃料後払いは任意規定で現実には賃料は前払いにしている契約がたくさんです。よってこれらの判断にはやや厳しいものがあるかもしれません。

また、事実認定を離れて、「慣習となっていない」という下りを法的に考えると、慣習になっているなら他と違いがないから加重しているとはいえないことになるという判断から、あえて言及したのだと思われます。しかし、民法91条に照らして考えると、慣習化していても、理由がないならなお公序良俗と判断するべきこともあるのではないかと思われますので、この点の考え方も気になります。下手をすると、更新料が日本中で行われているという証拠が出てきかねません。それよりも下記で検討する理由のない負担は無効だと端的に考えられるように解釈する方がよいのではないかと思われます。

2、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものか

一方的に害するかについては、京都地裁は規範を立てています。

消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があること(法1条)にかんがみ,当事者の属性や契約条項の内容,そして,契約条項が具体的かつ明確に説明され,消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。

概ね、消費者契約法の逐条解説もこれと同趣旨であり、通説的な解釈であるといえます。

一般的に、契約締結に至る交渉の経緯などを細かく検討することが指摘されているのですが、本件では、更新料がそもそも法的性質がよく分からないものであるという特殊事情があるために、被告主張の更新料の法的性質も検討して合理性があるかも検討しています。よって被告の主張する更新料の性格が妥当であるかを一方的に害するものかの要件で検討しています。

契約締結に至る過程に関する検討では、更新料まで考慮して契約を締結することは困難であることと、法定更新なら必要がないのに合意して契約を延長すると負担しないといけなくなるものである点を指摘して、「大きな負担」であるとしています。これは一方的に害するにつながる事情であるといえます。

また、被告は更新料の正当化のために、

  1. 更新拒絶権放棄の対価である
  2. 賃借権強化の対価である
  3. 賃料の補充である
  4. 中途解約権の対価である

という主張をしていました。

これに対しては、それぞれ

  1. 事業で賃貸借をしている以上、正当事由があり更新拒絶が認められるということはまずないので、放棄する更新拒絶権がそもそもない。
  2. 更新拒絶が認められることはまずないので、賃借人側からみて権利的に変化はない
  3. 使用期間に関係なく課されるので対価性がなく賃料と評価できない
  4. 本件契約では中途解約権は賃貸人にもあるがこちらには対価が予定されていないので、賃借人に側についてだけ対価を求めるのは合理性はない

という判断をして、更新料の性格に関する被告の主張を否定しました。

よって更新料の趣旨は不明瞭としました。

そこで京都地裁は、規範を再度敷衍して、(そのような不明瞭な性質であることを)賃借人にきちんと

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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