トライアイズ監査役、自らが行った仮処分申立ての弁護士報酬等の訴訟費用を監査費用として会社に請求する訴訟を提起


大証ヘラクレス上場のトライアイズの監査役が、3月に行った仮処分申立てに要した弁護士費用等の費用を監査費用であるとして会社に請求する訴訟を提起しました。監査役が監査費用の支払を求めて会社を訴えるというのは非常に珍しいのではないかと思います。

トライアイズによるリリース

監査役は会社とは委任の関係にありますから民法650条から当然、業務に必要な費用を会社に請求することが出来ます。それだけではなく、会社法388条に専用の規定が設けられています。

第388条(費用等の請求)

監査役がその職務の執行について監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)に対して次に掲げる請求をしたときは、当該監査役設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。

一 費用の前払の請求

二 支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求

三 負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求

上記の条文より、この規定は意味するところは、監査役が請求にあたって必要性を立証しなくて良いというところに意味があります。費用のことを心配するあまりに監査役の権限行使を萎縮させないための仕組みであるわけです。

そして監査費用とは、監査に必要な一切の費用が含まれるとされています。

よって、請求できるかどうかは、どのような仮処分であったのかによって決まることになります。

監査役の義務は、監査ですが、それだけではなく、取締役の行為の差止も認められています。今回問題となっている仮処分もこれであるようです。

第385条(監査役による取締役の行為の差止め)

監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2 前項の場合において、裁判所が仮処分をもって同項の取締役に対し、その行為をやめることを命ずるときは、担保を立てさせないものとする。

すると、当該仮処分が取締役の法令定款違反行為を差止ようとするものであったかが問題となるわけですが、この仮処分はなんと、会社が株主総会に当該監査役の解任を提案した議案の差止だったのです。

仮処分命令の申立てに関するお知らせ

この事案では385条にあたるとして何に該当するでしょうか。

仮に監査役に業務執行に問題がないのにそれを経営陣が煙たく思って解任しようとしたとかという場合なら、取締役の善管注意義務に反して385条で言うところの法令違反ということになるのでしょうか。

最近、監査役が頑張っている例がありますので上記のような想像をしてみましたが、事実関係の詳細が不明ですので逆である場合もありますので即断は出来ません。

とにかく監査役の解任の適否によって取締役の行為が違法であるかが左右されるように思われるのですが、すると解任は事由を問わないでできるので、結果として解任されたか否かで決まるのでしょうか。

本件では会社は結果として、議案を取り下げていますので、仮処分は直接には役に立ちませんでした。するとどう考えていいのか非常に難しいところです。

ちなみに、当該監査役は役員選任決議の取り消しの訴訟も提起しており、同社は経営をめぐって混乱していることが明らかになっています。

監査役が役員ではなく会社を訴えるなど非常に珍しいのですが、それゆえに難しい点をたくさん含んでいるように思えます。ちなみに仮処分では鳥飼重和弁護士に依頼をしており、中々な費用になっていることが上記リリースに載っています。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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