東京地裁、UFJの異議を退け、交渉中止の仮処分を認可


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UFJと東京三菱の経営統合に対して、住友信託がUFJ信託との優先交渉権があるとして、交渉中止の仮処分を求めて認可されていた問題で、東京地裁はUFJから出されていた保全異議に基づく異議審で、交渉中止の仮処分を再び認可しました。記事はこちら

保全異議は、債務者側(この場合、UFJ)の防御方法行使の機会ですので、これが認められなかったということは、現時点では、UFJ側の言い分が通らなかったことを示しています。

ただ、交渉禁止の仮処分という前代未聞の処置に対しては、法学界から賛否両論がでいているようです。日経の記事に囲みで出ていたのですが、法学者からのコメントを紹介していました。もっとも東大法学部教授のコメントはありませんでした。機会がある方は講義やゼミの際に質問されるとよいでしょう。

日経で紹介されていたもののうち、早大の田山教授(民法)は否定的な立場だそうで、UFJと住友信託の基本合意書は中間的合意に過ぎず、契約を締結しない権利を制限するまでの効力はなく、損害は金銭で填補すればよいという立場を表明されています。

要するに、交渉中止はやりすぎだということです。
そこで、金銭で済ませればよいという考え方は日本の民法学者には非常に多い思考パターンなので、ある程度しっくりくるのですが、日本では損害賠償額の評価はかなり低めになるので、そういう従来からの判例の積み重ねの延長上では、このたび住友信託が被るであろう損害を填補できないなと裁判所が考えたのではないかとみることもあできます。本来の筋からいえば、損害賠償に関する扱いを改めるべきなのですが、そこはひとまずおいておいて事例の解決にのみ的を絞ったと見ることもできるのではないでしょうか。

賛成の立場を取られた名大の中東教授の、事後処理ではない点を評価するという考え方はそういう点を考慮しているのではと思います。

これまでの日本の司法は抑制的過ぎ、事後の処理を不十分になすだけのような感じが結構ありました。そういう点を脱し、積極司法によってやった者勝ちみたいな状況を打破するのであれば支持できるのではないかと思います。

ちなみに、これは当該記事を書いた記者が田山教授のコメントを要約しすぎたのだと思いますが、正式な契約締結前だからだといってなんらの義務も発生せず、契約を締結しない自由が無制限にあるなんてことはありません。
交渉の内容によっては、交渉の不当破棄になりますし、何度か取り上げているように違約金を定めてお互い交渉するようなことも欧米では当然です。
契約締結を境にいきなり権利義務が生じるのではなく、契約熟度論みたいな理解が正しいと思います。

余談ですが、最初の仮処分を出したのは東京地裁の鬼沢判事ですが、記憶をたどるとお会いしたことがあります。ユーモアのある面白い方だったような記憶があります。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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