アルプス電気株主総会で単元未満株の買取等にかかわる定款変更の会社提案が外国人株主を主とした反対により否決される


株主総会シーズンですが、今年は業績の悪化でやや荒れ模様の総会が相次いでいるようです。それら一般的な動向とはやや異なる不思議な事象があったので取り上げます。

アルプス電気株主総会、一部議案否決 株券電子化巡る定款変更(日本経済新聞2009年6月26日)

アルプス電気は25日、同日に開催した株主総会で一部の議案が否決されたと発表した。株券電子化に伴う定款変更案の文言の一部が株主の権利行使を阻害しかねないとの懸念から、主に外国人株主が反対に回ったようだ。株券電子化に伴う事務に支障はないという。

否決されたのは、会社提案で株券電子化に伴う定款の一部変更を図った第1号議案。単位未満株の買い取りといった株式の取り扱い手続きについて、「取締役会の定める株式取り扱い規則による」と表記したのが反発を招いた。総会では議決権ベースで約4割が反対に回り、可決に必要な3分の2以上に届かなかった。「株主の権利がアルプス電気の取締役会によって制限されるとの懸念が出たようだ」(同社広報部)

過去にも06年に任天堂が配当など利益剰余金の処分を取締役会で決定できる議案を提出したが、総会で否決された例がある。株主の権利を巡る定款変更は、権利意識の高い外国人株主や機関投資家の関心が高いとされる。(00:30)

要するに、単元未満株の買い増しや買取に関する制度を定款で基本的な規定は設けるものの詳細は取締役会で定める別の規則によるとしたところ、株主権が取締役会によって制限されると思われて否決されてしまったということです。

定款変更は抱き合わせになっているので、電子化によって不要になった規定までもそのままになってしまいました。これらの規定は無効になるのでほっておいても変なことにはなりません。

さて、、「取締役会の定める株式取り扱い規則による」という定め方ですが、これはごく普通の定め方です。

否決してしまうと売り渡し請求は定款に規定をおかないと、設けられないので株主にとっては不利になります。

第194条

株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求することをいう。以下この条において同じ。)をすることができる旨を定款で定めることができる。

2 単元未満株式売渡請求は、当該単元未満株主に売り渡す単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

3 単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は、当該単元未満株式売渡請求を受けた時に前項の単元未満株式の数に相当する数の株式を有しない場合を除き、自己株式を当該単元未満株主に売り渡さなければならない。

4 第百九十二条第三項及び前条第一項から第六項までの規定は、単元未満株式売渡請求について準用する。

単元未満株の買取請求権は定めをおかなくても会社法の規定から当然に請求権がありますので、定款変更の否決によっては特段の問題は生じません。

第192条(単元未満株式の買取りの請求)

単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。

2 前項の規定による請求は、その請求に係る単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

3 第一項の規定による請求をした単元未満株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、当該請求を撤回することができる。

外国人株主や機関投資家が恐れたのは、よく分からないのですが、多分、取締役会が手続を定めることで請求権を実質的に制限できるのではないかということでしょう。

しかし、取締役会で請求権の行使を制限的にするような内容を定めることが出来るでしょうか。権利の内容については法定されたものを損なうことのないような手続しか定められないというところが妥当ではないでしょうか。

これらの株主の請求権に関する会社法の規定は強行規定でしょうから、定款で定めることも含めて会社が自治をすることは出来ないと思います。

もっとも、それは実体法上の話であり、争ってみなければ取締役会の定めた規定の当否はわかりません。そうなっては遅く、とりあえず会社が定められるという状況になること自体が許しがたいというなら、そうなのでしょう。

しかし、定款に単元未満株に関する請求権の手続きについて定めをおくのはいかにも場違いな感じがします。別に定めるとして、法的義務ではありませんが株主総会の承認を取ればいいのでしょうか。反対した株主に説明して納得してもらえばいいような気もしますが、この点はよく分からないところです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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