最高裁、継続的金銭消費貸借契約における過払金返還請求権の消滅時効が取引終了から進行する場合について判示


一連のサラ金関連訴訟に新しい内容が加わりました。

最高裁は、よくあるサラ金などの継続的な金銭消費貸借契約で、過払金が発生した場合には別口借入金債務に充当する合意がある場合に、過払金返還請求権の消滅時効は、特段の事情がない限り、取引終了から進行すると判断しました。

最高裁判所第三小法廷平成21年03月03日判決 平成20(受)543 不当利得返還請求事件

消滅時効は権利行使が可能となった時点から起算されますが、借入金が次々と発生して逐次返済していく消費貸借で過払金が発生した場合は、過払金返還請求権はいつから行使可能となるのかという問題です。

民法

第166条(消滅時効の進行等)

消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

2 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

最高裁は、逐次借入金が発生するような契約で過払金の充当合意がある場合には、新たな借入金の発生が見込まれる限りそれに充当されることになると考えて、過払金返還請求権は行使されないことになるとして、過払金充当合意が法律上の障害となるとして、全体の取引が終了した時点から消滅時効が進行するとしました。

借り手がまだ借入金が発生すると思っている限り、過払金の返還請求はしないで充当のためにとっておこうとするだろうということで、結果としてそれ以降に借入金は生じなかったとしても、権利行使はそもそも期待できなかったので消滅時効は進行していないということでしょう。

この発想は、判例中でも引用されていますが、このブログでも以前取り上げた自動継続特約付定期預金の事件(最判平成19年4月24日判例時報1979号56頁)と共通しています。

この多数意見に対しては、田原裁判官の反対意見がついています。

充当することを考えるにしても過払い金返還請求権の権利行使自体は可能であり、法律上の障害とまではいえないとしています。さらに充当合意に消滅時効の進行を遅らせる合意まで含まれていると解するのは無理があるとしています。

田原裁判官は、このような解釈をすると、貸金業者が新規の貸付に応じないようになってしまうと実際的な問題点にも言及されています。

この田原裁判官の反対意見は説得的ですが、あまりに貸金業者に厳しくするとかえって借り手を縛ることになってしまうのは最高裁も当然承知しているでしょう。

しかし世論、立法からして貸金業に大変厳しくあたった以上、それでいいとするほかないと判断しているのでしょう。それによる社会的な不利益があるとしても民主的に選択した以上、国民全体で負うことだと考えているのでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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