最高裁、公訴時効成立後に発覚した殺人事件の犯人に対する損害賠償請求訴訟で除斥期間経過後にかかわらず適用を否定


東京高裁、公訴時効成立後に発覚した殺人の損害賠償請求訴訟で除斥期間の適用を否定して請求を認容(2008年2月2日)の続報です。

最高裁も原審までの判断を支持して上告を棄却しました。

最高裁判所第三小法廷平成21年04月28日判決 平成20(受)804 損害賠償請求事件

この事件の論点は上記の高裁判決のエントリーにまとめてあるのでご覧ください。

単純にいうと民法724条の不法行為の時効のうち20年の方は、平成元年判決によって除斥期間とされています。よって停止等はないはずなのですが、これだとあまりに不当な結果になるために例外を認めた平成10年判決で制限行為能力者の場合には、法定代理人等が選任されてから6ヶ月間は時効が停止する民法158条の趣旨を援用して、救済を図ったことがあります。

第158条(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)

時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

この事件では、原告が制限能力者というわけではないので、平成10年判決からはさらに離れる感じがあるのですが、除斥期間の効果を制限することは同様に肯定しました。

その際、根拠について最高裁は民法160条に言及しています。

第160条(相続財産に関する時効の停止)

相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

条文の意味からは、やや離れるので、「民法160条の法意に照らし」としています。

平成元年判決に対して、158条による例外を認めたのが平成10年判決、同じ思考方法によって160条による例外を認めたのがこの判例という位置づけが出来るかと思います。

これでも十分な構成であるため、平成元年判決を変更する判断はしていませんが、田原裁判官は平成元年判決を変更するべきであるという意見を書かれており、債権法の改正作業に期待する旨もかかれています。

内田教授の行われている債権法の改正は、債権法にとどまらず、時効にも及ぶことになっていますので、立法的解決が図られるかもしれません。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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