この間、立法学で、「小さく生んで大きく育てた」議員立法の紹介をしていました。どうしても政治的な絡みがありますから、まずは立法を実現することに主眼を置いて、出来てからその後を考えるというのも必要な態度だと思います。今日の立法でそれをまさに期待しないといけないのは、労働契約法でしょう。経営側、労働側、公益委員の三者による審議会がうまく行かず、判例法理だけを条文化した法律になってしまい、しかも妙にアンバランスな内容になっていますが、立法化されたという一点だけでも大変な意義があると思います。この点評価する声はむしろ労働側でも労働弁護士にあるそうで、批判の声を上げている勢力はむしろ労働法学者に多いそうです。労働弁護士からすると解雇権濫用法理があることを、オーナー経営者に分からせるにはやはり条文があるということが一番効くそうです。これに対して学者の立場からすれば、充実した内容にするという理想に重きをおくのも当然ですから批判の声を上げるのも分かりますが、あまりに固執すると立法すら出来なかったでしょうから現実的というのも大事ではないかと思います。労働法学者からは参議院選挙の結果、国会がねじれてしまったことから、参議院で民主党が連合の案に依拠した独自の対案を可決することを期待した向きが相当あったようです。結果、民主党も現実的な対応をしてしまったため、非常に残念がっておられるようです。今の荒れている国会だったら、希望はかなったかもしれませんね。労働契約法成立までの一件を見ても、東大の労働法学と他の大多数の労働法学はまったく性格が異なることが非常によく分かりました。