最高裁、建物賃貸借で賃貸人の修繕義務の不履行に伴う損害賠償請求で通常生ずべき損害について判断


債務不履行の効果として認められる損害賠償の範囲については、民法416条に規定があります。

第416条(損害賠償の範囲)
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

要するに通常損害と予見したか予見可能性のある特別損害に限定されます。
このうち通常損害の範囲について最高裁が判断した事例が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成21年01月19日判決 平成19(受)102 損害賠償請求本訴,建物明渡等請求反訴事件

これは建物賃貸借の事案で、商業ビルでカラオケ店を営業していた被上告人が、賃貸人である上告人が修繕義務が不十分で建物内で汚水が噴出して営業できなくなったために損害賠償を求めているものです。

原審は、汚水噴出後1ヶ月の日から損害賠償請求の終期までのうべかりし営業利益の分も損害賠償を認めたのですが、最高裁は、事故後は営業再開の実現可能性は乏しくなっていたとして別の場所で営業を再開するなどの措置を取らないで、営業利益部分の損害賠償を認めたことは是認できないとして、通常損害の判断に誤りがあるとして原審に差し戻しました。

以下のように判示しています。
「そうすると,遅くとも,本件本訴が提起された時点においては,被上告人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく,本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて,その損害のすべてについての賠償を上告人らに請求することは,条理上認められないというべきであり,民法416条1項にいう通常生ずべき損害の解釈上,本件において,被上告人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における上記営業利益相当の損害のすべてについてその賠償を上告人らに請求することはできないというべきである。」

要するに損害軽減義務を認めたわけですが、条理を根拠として賠償を制限するという構成がとられています。
ひとまず「損害」にはすべて含まれることが前提とされており、これまでの判例と同じです。
この判断の根底にはこのビルがとてつもなく老朽化しており、とても営業再開は無理であるという事実が作用していると思われます。

そもそも事故後1ヶ月後という時点はどこから出てきたのかいまいち分からないのですが、差戻審ではどこから切るのかについて審理がされることになるかと思われます。


About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)