会社法改正の動きがでてきました。
本日の日経朝刊だけで報道されたので例によって、様子見的な第一報だと思われます。その内容というのは、募集株式で第三者割当をする場合に、株主総会を義務付けるというものです。 ************************************************************************************************* 第三者増資、総会決議を義務化 法務省、会社法改正で検討(日本経済新聞2008年12月7日)
法務省は、買収防衛などに活用される第三者割当増資により利益が縮小しかねない既存の少数株主の保護に向け、会社法改正の検討に入った。現行法では事実上、取締役会の判断で新株を発行できるが、株主総会の決議を義務付ける方向。来年秋にも法制審議会(法相の諮問機関)で始める会社法の次期改正論議で論点の1つとし、2011年の通常国会への改正案提出をめざす。
第三者割当増資は取引先や提携先の企業など特定の第三者に新株を割り当てる資金調達方法。1株当たり利益の縮小や投資ファンドなどへの経営権の移動も考えられるため、少数株主や外国人投資家らから規制強化を求める声が強まっていた。(07:00) *************************************************************************************************
会社法の募集株式の手続に関する規定は錯綜していて非常に読みにくくなっています。
神田教授が読みにくいとお書きですので、堂々といってよいかと思います。
かなり簡略化してまとめると、募集株式の発行にあたって募集事項の決定をどう行えばよいかについての規定は以下のようになります。
199条 原則として株主総会の特別決議が必要
200条 特別決議で取締役会に決定を委任することが出来る
201条1項 公開会社は有利発行以外は取締役会で決定することが出来る
202条 株主割当の場合について会社の属性に応じて個別に定められている。公開会社なら取締役会(3項3号)。
上記から、公開会社が第三者割当をする場合でも有利発行でないなら取締役会決議で募集事項を決定することが出来ます。株主総会の決議が必要とされないため、既存の株主の地位を害することが取締役会によって行われてしまうということになります。
もっともここでの論点とはずれますが、有利発行でない第三者割当なら完全に適法に発行されるかどうかは別問題でして、別途争うことは可能で違法と評価される場合もありえます。
このたび言及されているのは、第三者割当ならすべからく募集事項の決定に株主総会決議を必要とするように改正するというもので、特別決議にするか普通決議にするかは別途論点となる模様です。 かつては株主割当が多くを占めていましたが、その後は公募や第三者割当が多くなっています。すると、必ず株主総会決議がいるとすると、資金調達を意図する側にとっては著しく選択の幅を狭まることになりかねません。もっとも取締役会決議ではだめとなると実務と著しく乖離が生じるとまではいえないとも思います。