集団の再生の前に


このブログへのコメントでも情報が寄せられていますが、内定を取消された学生が合同労組に入って会社側に団体交渉を求めることになっているようです。これをきいて単純な感想としては、やるなあと感心したのですが、法的に考えると、別の思いが浮かんできました。以下ではあくまでいろいろなことを仮定しての考察です。合同労組に入ったということは、当該企業に企業別組合があっても入れないということだろう思うのですが、労働契約が成立していてもまだ労働者ではないために、そのような帰結になるのでしょう。労基法、労働契約法から見る限り、まだ労働者の定義には該当しそうもない感じがします。入社を誓約しているので完全に自由行動ができるわけではないですが、労働者性の要素である指揮命令下とはいえないですし、労務の提供に対する対償としての賃金もないです。また労組法の労働者に該当するかというと、労組法3条で、要するに賃金を得ているものとしているので、内定中だと該当しなそうです。労働契約が成立しても、労基法・労働契約法、労組法の双方で労働者にはなっていないということがありえるということになります。今まで考えもしませんでした。すると、会社側としては使用者ではないとして団交を拒否できるでしょうか。使用者ではない場合というのは、正当な団交拒否事由になります。労組法の使用者は、かなり広い概念で、労働条件について交渉するのに相応しい相手なら肯定してしまうわけですが、そもそも交渉しようとしている側が問題としようとしているのが労働者ではないのなら、使用者でもないことになるでしょうか。あまりきいたことがない議論なので、これまでの伝統的な枠組みで考えると、集団的労使関係ではうまく行かない感じがします。もちろん任意に応じてくれるなら問題ありませんが。集団的労使関係は、特に労働組合を中心として構築されているので、企業別組合が主の日本では正社員の地位を得ていないと活用できません。バブル期後の中高年の世代の賃金カットなどについては、集団的労使関係が機能した面もありましたが、若い世代に労働契約上の地位からして不利益を押し付けている今日では、集団的労使関係による規律が機能しないのではないかと改めて思った次第です。その代わりに個人を中心にすえて私法的規律をしていこうというわけですが、個人では力は弱いですからなんとも大変です。労働環境が多様化してしまい、規格化された正社員しか扱えない労働組合の組織率が低下している時代ですが、だからこそ労働法の役割はかえって重いのですね。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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