大阪高裁、マイカル社債訴訟で野村證券に説明義務違反で一部賠償命令


マイカルの破綻で社会が債務不履行になったのは一昔前の話です。今年になって不動産会社を中心に社債の債務不履行が起きていますが、これはマイカル以来初の事例です。いかにマイカル事件が稀有なことだったかがわかります。さて、マイカル社債の購入者が取り扱った証券会社を訴える裁判を各地で提起しておりいずれも請求棄却だったのですが、大阪高裁で投資経験に応じての説明義務を認定して、一部の投資家に対してはこれを怠ったとして、過失相殺の上、請求を一部認容した判決が出ました。*************************************************************************************************マイカル社債訴訟:野村証券に対し700万円賠償命令−−大阪高裁(毎日新聞2008年11月21日)経営破綻(はたん)した大手スーパー「マイカル」の社債を巡り、「リスクに関する説明が不十分だった」として、投資家13人が証券会社4社に総額約5000万円の損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決が20日、大阪高裁であった。大和陽一郎裁判長は全原告の請求を棄却した1審・大阪地裁判決を変更し、野村証券に対し投資家3人に計約700万円を賠償するよう命じる判決を言い渡した。 原告は00~01年に、マイカルが個人投資家向けに発行した社債を証券会社を通じ購入。判決は投資経験が乏しかった3人への販売については「格付け機関による社債の評価やリスクに関する説明義務を怠った」と認定した。【川辺康広】*************************************************************************************************証券取引で損失が生じた場合に証券会社を訴えるということはよくありますが、そのとき根拠とするのは、要するにちゃんと説明してくれなかったということになります。この事件は証券取引法時代の事件ですが、当時から証券会社の行為規制の内容として、適合性原則と説明義務が規定されており、金融商品取引法にも引き継がれています。よって、証券会社に対する訴訟では、適合性原則違反、つづいて説明義務違反で主張をするというのが定石です。第40条(適合性の原則等)金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行つて投資者の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。金融商品取引業等に関する内閣府令第百十七条 法第三十八条第六号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。一 次に掲げる書面の交付に関し、あらかじめ、顧客(特定投資家(法第三十四条の二第五項の規定により特定投資家以外の顧客とみなされる者を除き、法第三十四条の三第四項(法第三十四条の四第四項において準用する場合を含む。)の規定により特定投資家とみなされる者を含む。以下同じ。)を除く。以下この号において同じ。)に対して、法第三十七条の三第一項第三号から第七号までに掲げる事項(ニに掲げる書面を交付する場合にあっては、当該書面に記載されている事項であって同項第三号から第七号までに掲げる事項に係るもの)について顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為イ 契約締結前交付書面ロ 上場有価証券等書面ハ 第八十条第一項第三号に掲げる場合にあっては、同号に規定する目論見書(同号の規定により当該目論見書と一体のものとして交付される書面がある場合には、当該目論見書及び当該書面)ニ 契約変更書面適合性原則には絶対勧めてはいけない狭義と程度に応じて説明すべきである広義があるとされていますが、要するに能力経験などに応じての比例原則的な説明義務ということになりましょう。説明義務を定めている業等府令117条1号でもそれが伺われます。この事件では、経験に乏しかった投資家についての説明義務の懈怠が認められていることから、まさにこの適合性原則、説明義務の考え方の問題であったことが分かります。裁判例では、適合性原則違反を認めず、説明義務違反は肯定して過失相殺をするくらいの処理で落ち着くことが多いのですが、この判決もまさにそのような結論になっているように伺われます。適合性原則ではなく説明義務に落とすのは、適合性原則だと法令違反になってしまい重いというイメージがあるためとされています。実際には比例原則的に求められる義務を懈怠したのであるという意味では、両者にあまり違いは内容に思えますので、感覚の問題でしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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