裁判例におけるフェア・ユースの抗弁


ここのところ日経新聞がフェア・ユースの抗弁推進月間であるかのように次々と記事を掲載しています。これに対して、多くの専門家によるエントリーがすでに公表されており、フェア・ユースの抗弁さえ設ければ問題は一挙解決のような単純な話ではないことが指摘されています。いまさらそれらの見識の高い見解に付け加えるものありませんので、日本の裁判例はフェア・ユースについてどういう態度を示しているかという基本について取り上げておこうかと思います。フェア・ユースの抗弁が主張された事件はいくつかあるのですが、有名どころで以下のを取り上げます。東京地判平成7年12月18日知裁集27巻4号787頁【ラストメッセージ in 最終号事件】 この事件は極めて変わった書籍が問題となったものです。雑誌の最終号の表紙、休廃刊の挨拶を集めたもので、勝手に使われたということで出版各社が複製権侵害で訴えたという事件です。これに対して被告側が抗弁の一つとしてフェア・ユースを主張したため、一般論の判示がなされたという事件です。以下のように述べています。「 被告は、「フェア・ユース」に関する一般的条項を持たない我が国においても、「フェア・ユース」の法理が適用されるべきである旨主張する。しかしながら、我が国の著作権法は、一条において、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作権の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産としての著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と定めていることからも明らかなように、文化の発展という最終目的を達成するためには、著作者等の権利の保護を図るのみではなく、著作物の公正利用に留意する必要があるという当然の事理を認識した上で、著作者等の権利という私権と社会、他人による著作物の公正な利用という公益との調整のため、三〇条ないし四九条に著作権が制限される場合やそのための要件を具体的かつ詳細に定め、それ以上に「フェア・ユース」の法理に相当する一般条項を定めなかったのであるから、著作物の公正な利用のために著作権が制限される場合を右各条所定の場合に限定するものであると認められる。」これだと解釈によってフェア・ユースを認めることは無理のように思えますが、一応その道はふさいでいないようで以下のように述べています。「そして、著作権法の成立後今日までの社会状況の変化を考慮しても、被告書籍における本件記事の利用について、実定法の根拠のないまま被告主張の「フェア・ユース」の法理を適用することこそが正当であるとするような事情は認められない」よって、今日でもなおまずは立法的解決ではないとだめということになりましょう。条文にきっかけのあることなら柔軟に解釈することもできましょうが、ないなら立法者意思はそういうものであるとして厳格に解するのはよくある思考様式ですので(三村判事がこのようなことを判示されたいたような記憶があります)、当然かと思われます。さて、本件ですが最終号の挨拶だけ集めたというものですから、フェア・ユースを認めたとしても、該当しないのではないかのではないかなと思えます。この事件は抗弁を並べるだけ並べたというものでして、この後には引用の抗弁が続いています。現在の状況におけるフェア・ユースの扱いもわかる事件であるわけです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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