東京地裁、ライブドアの有価証券報告書虚偽記載の損害賠償請求で、検察官による「公表」があったと判断


ライブドアの有価証券報告書の虚偽記載でライブドアの株価が急落をしまして、株主がこれに対して損害賠償請求訴訟を提起しています。
この訴訟について、損害額の推定の規定がある証券取引法21条の2(金融商品取引法21条の2)の適用が可能であるのかが問題となりました。
それは、21条の2では虚偽記載があったことの公表が要件となっているものの、ライブドアは今日に至るまで正式なリリースを流すなどの形での公表をしていないため、適用できないのではないかと指摘されたためです。
金融商品取引法
第21条の2(虚偽記載等のある書類の提出者の賠償責任)
第二十五条第一項各号(第五号及び第九号を除く。)に掲げる書類(以下この条において「書類」という。)のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、当該書類の提出者は、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されている間に当該書類(同項第十二号に掲げる書類を除く。)の提出者又は当該書類(同号に掲げる書類に限る。)の提出者を親会社等(第二十四条の七第一項に規定する親会社等をいう。)とする者が発行者である有価証券を募集又は売出しによらないで取得した者に対し、第十九条第一項の規定の例により算出した額を超えない限度において、記載が虚偽であり、又は欠けていること(以下この条において「虚偽記載等」という。)により生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の際虚偽記載等を知つていたときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、当該書類の虚偽記載等の事実の公表がされたときは、当該虚偽記載等の事実の公表がされた日(以下この項において「公表日」という。)前一年以内に当該有価証券を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証券を所有する者は、当該公表日前一月間の当該有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額。以下この項において同じ。)の平均額から当該公表日後一月間の当該有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、当該書類の虚偽記載等により生じた損害の額とすることができる。
3 前項の「虚偽記載等の事実の公表」とは、当該書類の提出者又は当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者により、当該書類の虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実について、第二十五条第一項の規定による公衆の縦覧その他の手段により、多数の者の知り得る状態に置く措置がとられたことをいう。
4 第二項の場合において、その賠償の責めに任ずべき者は、その請求権者が受けた損害の額の全部又は一部が、当該書類の虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことを証明したときは、その全部又は一部については、賠償の責めに任じない。
5 前項の場合を除くほか、第二項の場合において、その請求権者が受けた損害の全部又は一部が、当該書類の虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことが認められ、かつ、当該事情により生じた損害の性質上その額を証明することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、賠償の責めに任じない損害の額として相当な額の認定をすることができる。
ライブドアに対する訴訟のうち、機関投資家が訴えていた方で6月13日に東京地裁で判決がありました。
まだ、判決全文には当たっていないのですが、報道によると、東京地裁は21条の2を適用したとのことで、検察官によって公表があったと判断した模様です。
具体的には、強制捜査の二日後にマスコミはいっせいに虚偽記載について報道を始めたので、この時点で検察からマスコミに伝達があったと推認され、それは公表にあたると判断しているようです。
これは上記の条文からはかなり大胆な解釈でして、公表を限定してしまったため使いにくいという指摘に答えようとするものだといえるでしょう。
しかし、下落分の株価をすべて損害額とはしていません。
ライブドアショックと呼ばれましたが、日本の株式市場が全体として急落してしまったので、その分を減じる必要があるということで3割を減額しています。
個人投資家の方の訴訟も別に行われていますが、そちらの救済にも明るい見通しがあるのではないかと報道されています。
しかし、この解釈は救済のためとはいえ、文言上は非常に無理があるように思えますし、そもそも当初の検察の捜査の容疑は風説の流布でした。この判決もマスコミが虚偽記載について報道し始めてからに限っていますので、その点は考慮しているのは確かですが、非常に困難なものを抱えている感じがします。
21条の2が使えない場合は、役員等を訴える22条や不法行為などを用いることは可能ですが立証が極めて大変であるのは周知の通りです。
ライブドアは控訴する方針であるとしており、この解釈が安定するかはまだ分からない感じがします。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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