27日に東証が、「2008年度上場制度整備の対応について」を公表しました。
会社法では可能ではあるものの、株主の利益を害する行為に対して取引所のルールとして対応策を考えるとしています。
2008年度上場制度整備の対応について
例としてあげられている問題があると目される事象は以下です。
・ 大幅な希釈化を伴う新株式等の発行
・ 不透明な割当先に対する第三者割当てによる新株式等の発行
・ 多くの株主の株主権を奪うような株式併合
・ 上場子会社における社外役員が全て親会社出身であるようなケースなど独立性の問題
・ 横並び的に買収防衛策を導入するような状況
・ 過半数近くの議決権を持つオーナー系企業による買収防衛策の導入が行われる状況
・ 一部の機関投資家を除いて適切な議決権行使を行っていないという声
・ 監査役制度やコーポレート・ガバナンス向上のための各社の取組みに対する理解不足
希釈化はすでに実例がかなりあり問題とされていますし、株主追い出しのスキームもいくらでも可能です。
社外役員が親会社出身であるという点についてですが、会社法は2条15号で明らかに親会社役員の社外取締役を許容しています。
第2条(定義)
十五 社外取締役 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。
上記から分かるように、問題となる会社とそれよりは下の会社の出身者のみを認めないとしている以上、親会社の役員はOKということになります。
これで当該会社が委員会設置会社だったら機関構成は極めて簡素になりますので、親会社出身の社外取締役によって支配されるということになります。
しかし、これは濫用というよりは法的には許容されていることですので、全員を親会社出身にするまでなどとやりすぎると問題があるということで東証としては規制するなりすることになります。
もっとも、会社法で定めた内容自体にも問題があるともいえると思いますが…。
会社に関する規制は法律だけではなく、上場規則など様々なものの組み合わせになりますので、ベストミックスなどといわれますので、これでいいのだろうとは思いますが、法的制度には濫用が色々と思いつくのを上場規則で規制するというのには若干違和感があります。