偽装請負という語が聞かれるようになって久しいですが、これは人件費抑制のため、実質的に雇用しているのに派遣労働の形などをとった濫用的な場合のことを指します。
大阪高裁で松下プラズマディスプレイの工場での派遣労働が偽装請負であると判断されたので取り上げます。
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偽装請負 雇用関係を認定…大阪高裁(読売新聞2008年4月26日)
松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ(PDP)」(大阪府茨木市)茨木工場で働いていた元請負会社社員の吉岡力さん(33)が「偽装請負を告発した後に解雇されたのは不当」として、同社に従業員の地位確認や慰謝料支払いなどを求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。若林諒裁判長は、違法な偽装請負で、請負会社との雇用契約は無効としたうえで「松下PDPと直接雇用の関係にあった」と判示、慰謝料45万円の支払いだけを認めた1審・大阪地裁判決を変更して松下PDPの従業員と認め、慰謝料90万円と未払い賃金の支払いを命じた。松下PDPは上告する方針。
偽装請負を巡り、就労先企業の雇用責任を認めたのは極めて異例。
判決によると、吉岡さんは請負会社社員という形で2004年1月から茨木工場に勤務し、05年5月、大阪労働局に偽装請負の実態を告発。同年8月、労働局に是正指導を受けた松下PDPから半年間の期間工として直接雇用されたが、単純作業に一人で従事させられ、06年1月末、期間満了を理由に職を失った。
(略)
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結論としては、職を失ったもと派遣労働者を派遣先が雇用することが命じられたという判断になったため衝撃的な内容ですが、この件は事実が非常に錯綜しているため整理が必要です。
まず偽装請負の問題があり、派遣先に直接雇用されていたのかという判断があります。
この点については、具体的な事実関係から松下プラズマディスプレイと直接の雇用関係があったと判断されています。
また、この件では、偽装請負であるとして内部告発をしており、これによって是正命令がだされて、松下が一旦直接雇用しています。
しかし、期間工であったため、期間満了でそのまま更新されずに職を失ったという経緯をたどっています。
これは、いわゆる雇止めの問題ですが、直接雇用されてから、単純作業に一人で従事させられるという扱いを受けており、内部告発に対する報復である感じがあります。
大阪高裁も「告発への報復など不当な目的」としています。
雇止めにも、解雇権濫用法理がそのままの形ではないですが適用されるので、不当な目的があるとされたことから、濫用であると評価された模様です。
非常に異例の判断であると報道では指摘されていますが、本件の特殊性に起因している点があるのではないかと思われます。
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