ナナボシ粉飾決算問題で大手監査法人トーマツに損害賠償命令


経営破たんした発電設備会社ナナボシの粉飾決算をめぐり、管財人が会計監査人であった監査法人トーマツに対して損害賠償を請求した訴訟の判決が18日に大阪地裁であり、10億1900万円の請求に対して一部を認容して1700万円の賠償をトーマツに命じました。

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ナナボシ粉飾決算、トーマツに賠償命令・大阪地裁(日本経済新聞2008年4月19日)

経営破綻した発電設備工事会社「ナナボシ」(堺市、民事再生手続き中)の粉飾決算事件に絡み、同社管財人が「粉飾を見抜けず会社に損害を与えた」として大手監査法人のトーマツに約10億1900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は18日、一部について「監査手続きに過失が認められる」として約1700万円の賠償を命じた。

 管財人の辰野久夫弁護士によると、上場企業の法定監査で監査法人の過失を認めた判決は極めて異例。
(略)
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トーマツは、会社が行っていた粉飾決算を見抜けずに適正意見をつけていたことが問題となりました。

会社法423条より、会計監査人は任務懈怠があったときには会社に対して賠償責任を負います。

問題は不正の看過が任務懈怠になるかですが、会計監査人は特に特約を結ばない限り不正発見の手続をとらねばならないものではないと裁判例ではされています。
もっとも不正が発見できるような監査計画を作ることが日本公認会計士協会の監査基準委員会報告書では言及されているので、責任を負わない方向に解することも難しいものがあります。
素朴な感覚では、不正を見抜けないのは任務懈怠だろうという感じがしてきますが、責任をやたらと認めるとリスクの高い会社の監査が敬遠されるだろうと言う指摘があります。
この点からは政策的ですが、責任を限定的に解する必要がありましょう。
また、責任が第三者に対するものであるのか、会社に対するものであるのかによっても変わって来ることになりましょう。

裁判例では不正の看過について責任を認めても、大幅に過失相殺した例があるので、この論点は流動的な状況です。

本件では具体的にどのように責任を認めたのか事実が分からないのでなんともいえませんが、責任を認める一方で賠償範囲を限定しているか、損害賠償の評価で調整をしているのではないでしょうか。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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