イーアクセス、アッカが行った自己株式取得に対して質問状を提出


会社法の自己株式取得規制は、以下のような制度設計になっています。
156条1項より原則、株主総会で大枠を定めておくことになっていますが、459条1項1号から剰余金分配権限を取締役会に委譲している場合は、取締役会決議で機動的にできることになります。
これは自己株式取得が経済的には剰余金の分配と似たようなものであるためです。
しかし、特定の株主から取得する場合は、160条から手続が厳重になっており、459条1項1号が160条の場合を除いていることから、株主総会で決するのを避けることができなくなります。
しかし、さらに例外として、市場取引等で取得する場合は、すべての株主に参加のチャンスがありますので、165条1項より上記の規制は適用除外がされています。さらに165条2項から取締役会設置会社では、定款に定めをおけば取締役会決議で市場取引による自己株式取得ができることになります。この場合、条文は取締役会設置会社としているだけで剰余金分配権限を取締役会に委譲していることを求めていませんので、取締役会に剰余金分配権限を移しているようなものであることになります。
さて、一般的に自己株式取得というのは買い付けたい特定の相手がいることが結構あります。
すると、本筋から行くと、株主総会に諮らないといけないのですが、165条2項から株主総会を迂回してやることが考えられています。
それが時間外取引の活用でして、市場を使うものの時間外取引をすることで特定の相手からの取得を可能にすることができます。
それだと、ほとんど相対取引になってしまいますので、公告後、しばらくあけてから買付期間を設けるなどの実務になっています。
イトーキの例
さて、ADSL事業者のアッカが第3位株主である三井物産が撤退するに当たりその保有株式をこの取引方法を用いて取得したことが、第1位株主であるイーアクセスから問題視されており、質問状が提出される事態になっています。
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アッカと再び火花 イー・アクセスが質問状(MSN産経2008年3月11日)
ADSL事業者のイー・アクセスは11日、同社が筆頭株主のアッカ・ネットワークスが7日に行った自己株式の買い付けが一般投資家の利益を損ねるとして、アッカに質問状を提出した。イー・アクセスは今年1月、アッカの現経営陣を退陣させ、イー・アクセス幹部を送り込むよう求めた株主提案を発表。2月にはこの提案を取り下げたが、今回の件により経営の支配をめぐる攻防が再燃した。
 アッカは今月6日に自社株買い実施を開示し、7日午前8時45分、ジャスダック市場の時間外取引で、第3位株主の三井物産が保有していたアッカの発行済み株式10・30%をすべて買い取った。取得額は19億2300万円。
 一方、イー・アクセスも7日の同時刻に、証券会社を通じてアッカ株の買い注文を出したが、ジャスダック市場に受け付けられなかった。
(略)
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イーアクセスからの質問状
これは3月6日に公告して、翌7日に時間外取引で三井物産から株式を取得したというものです。
3月6日のリリース
3月7日の結果
株主移動のお知らせ
市場取引についての例外をもうけた会社法のそもそもの趣旨からいくとおかしいことに思えますが、形式的には時間外取引も市場取引には入りますので、会社法的には165条2項に該当すると言うほかないのではないでしょうか。実際にこういうやり方の実例は他にも見受けられます。
そもそもアッカはこの件を会社法165条2項の問題とはしておらず、459条1項1号の取締役会決議を行っており剰余金分配に関しての問題はそちらのルートからクリアするようにしています。
市場から取得したので特定の株主からの取得ではなく、459条1項1号に依拠しているので問題はないというのがアッカの考えている法的構成ということでしょう。
これに対してイーアクセスは、実質的に相対取引ではないかという主張がなされています。
この実質論にも納得できるところはありますが、会社法の条文からいくと形式的には難しい感じもします。
不意打ち的な市場取引等による自己株式取得は例がありますが、経営をめぐって問題となっているため、特にこの件は問題として顕在化してしまった感じがあります。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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