旧カネボウの営業譲渡に反対して株式買取請求権を行使した株主が東京地裁に価格決定の申立てをしている件(会社法で言うと469条470条になります)で、ちかく東京地裁が判断を下すことが報道されています。
会社側提示額が162円です。
この価格は営業譲渡に伴う株式買取請求権の行使に先立つ投資ファンドによる公開買付の価格が162円であったことからこれに依拠しているものと思われますが、公開買付当時の株価は360円であり、不可解な買付価格であったことが、今回の争いにつながっています。
審理の過程で鑑定が行われ、360円という結果になっています。
これは当時の株価ということになるかと思います。
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旧カネボウ株「適正価格」で対立(読売新聞2008年2月26日)
旧カネボウが2006年に行った自社株の買い取りを巡り、個人株主ら約530人が東京地裁に「適正な価格」の決定を申し立てている問題で、近く地裁が判断を下す。M&A(企業の合併・買収)で、少数株主から株式を買い取る価格がここまで徹底的に争われたケースは、今まで国内ではなく、市場関係者は地裁の判断に注目している。(有光裕)
◇対 立
問題となった株式の買い取りは旧カネボウが06年5月、「日用品」「食品」「薬品」の主力3事業を別会社に売却したことに伴うもの。産業再生機構から株式を買い取るなどして旧カネボウの大株主となった国内3投資ファンドが、役員を送り込んだうえで実施した企業再生策の一環だった。
しかし、反対する一部の株主が旧カネボウに対して会社法に基づく株式買い取り請求権を行使した。
少数株主側は、旧カネボウが示した1株162円の買い取り価格は低すぎるとして06年6月、東京地裁に適正な価格の決定を申し立てた。少数株主側は「旧カネボウが買い取り価格の根拠にした業績見通しは低く見積もられ、(価格を低くするという)結論ありきの操作が行われた」と指摘し、1株1578円以上が適正だと訴えている。
これに対し、旧カネボウ側は、事業売却に先立つ06年2~3月に、ファンド傘下の投資会社が1株162円で行ったTOB(株式の公開買い付け)に1万人以上の株主が応じたことなどをあげ、提示価格には合理性があると反論している。
◇焦 点
注目されるのは、地裁が選んだ鑑定人が07年11月、旧カネボウ側の提示価格の2倍以上にあたる「1株360円」を適正とする鑑定書を出したことだ。
(略)
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問題の発端は公開買付の価格が怪しかったことから生じているのですが、司法審査の機会が定められている営業譲渡の段階での株式買取請求権で争われたというのが実態です。
牛角のケースでもそうだったのですが、価格決定の申立ては最終的な手段であるためか、株式買取請求に先立つ事象の当不当が争われてしまう傾向があることがよくわかります。