このエントリーのタイトルをみて、何を当たり前のことをと思われるかもしれませんが、会社法では、わざと会社が商人であるかについて規定を欠いています。
民事会社をなくしたため、商行為を目的としない会社もありうるという考え方がありうるためです。
会社が商人か否かの実益は何かというと、株式会社が医療や農業をなしうるかということにつながります。
しかし、商人については規定を欠いているとはいっても、会社法は5条で会社の行為を商行為としています。
第5条(商行為)
会社(外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。
一方、商法では商人の定義規定をおいており、商行為をする者を商人とするという趣旨の内容です。
第4条(定義)
この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。
これらをあわせて解釈して、会社とは商人であるとするのが江頭説なのですが、最高裁はこのたびこの説そのままの判示を行いました。
最高裁判所第二小法廷平成20年02月22日判決 平成19(受)528 所有権移転登記抹消登記手続等請求本訴,貸金請求反訴,所有権移転登記抹消登記手続請求事件
この事件の本筋は、会社経営者で竹馬の友である両人が「男らしくバンと貸してやるという気持ち」で会社を通じて竹馬の友に貸したお金が商事時効にかかるのか民事時効なのかが問題となっているのですが、その判断に当たっての一般論の判示で、会社の商人性についての下りがありました。
「会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条),会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである」
会社の商人性は当然の前提となっています。よって商人であるため商行為の推定が働き、推定を覆すにはそれを主張する側から立証がいるとしているわけです。
規定だけ見ると他に解釈の仕様がないようにも思えますが、とにかく会社法の解釈に新しい点が加わったといえるのではないでしょうか。