改めて問われる「受け皿論」


今日は非常に暑かったですね。
休みの日くらい過ごし易い気候であって欲しいです。

さて暑苦しい日にさらに暑苦しい話題で恐縮なのですが・・・。

かつて行われた地方分権の是非を巡る論争の中で、地方分権否定側の言説として「受け皿論」というのがありました。
これは、地方自治体には、これまで多様な業務をした経験がないため、地方分権に耐えられるだけの能力がないため(地方分権は)できないというもので、地方に分権にたるだけの受け皿がないといういうことから「受け皿論」といわれました。

こんな言い方をするなら、やったことがないところにはおよそ権限の委譲することはできず、すべての権限は経験のある中央に集中していかねばならないので、かなり無理のある理屈なのですが、地方であると囁かれる縁故採用などを念頭においていたため、一定の通用力を持っていました。

今日では、地方分権の流れが定着して、その動きは不動に見えますが、最近、気になることが相次いでいます。それは、地方分権一括法で地方に許された法定外目的税をめぐる地方の迷走で、はからずも「受け皿論」でいわれていたことを現出させてしまっています。

何が問題かというと、あまりに安直な内容すぎて、法律違反、ひどいものにいたっては憲法違反の可能性が相当ある税を作ろうとしています。

5月12日の日経朝刊に東大法学部の中里教授が寄稿されていた論文に極めて端的に示されているのですが、最近の例でもっとも問題がありそうなのは、豊島区が計画している放置自転車税です。

これは自転車の駅前放置が多いことから、鉄道事業者に課税しようというもので、鉄道利用以外の目的での放置が考えられる商業施設は不問であったり、自転車の数ではなく駅の利用者数から税額を算定するなどかなりすごい内容なのですが、特にすごいのが自転車法を無視しているところです。

中里教授もお書きになっているのですが、自転車法では鉄道事業者は放置自転車対策への協力義務がありますが、この税は、強制してしまうことになるため協力という点を乗り越え、法律の範囲内でのみ許される地方自治の範囲を逸脱している可能性が相当あります。すなわち憲法違反の可能性がかなりあります。
ウェブサイトを見る限り協力義務である点は豊島区も把握しているようなので、それなのにかような税金を作ろうとしているということは基本的な点を履き違えているといわざるを得ません。
また自分たちの議会に代表を送っていない(=圧力団体にならない)ところからのみ税金をとろうとしているため、法の下の平等にも反しそうです。

法律のイロハなのですが、地方自治や当事者自治といった狭い範囲での自由裁量は憲法などの法律によって許された範囲でしかできません。そうでないと当事者の合意で人権無視などをできてしまいうることになり不当だからですが、日本ではこれまで自治をあまりしたことがないせいか、この点についての理解が足りないようです。

以前にも取り上げた地元の自治会関係の規約では、財産権侵害に当たる規定があり、相当問題だと思っているのですが、頑固なお年寄りが会の維持のためには強制は必要だと信じられないことを言っています。

自治体から自治会まで様々なレベルでまだまだ受け皿論が通用してしまいそうな気配ですが、もっと問題なのは、こういうことが続くと、地方分権などに逆風になる可能性があることでしょう。

せっかくできるようになった権限である以上、大切にして、よく勉強した上で行使しないととんでもないしっぺ返しを食うことになりそうです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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