総務省、「フリーオ」を念頭に、デジタル放送複製制限回避機器の規制を検討


現在の日本の地上波デジタル放送には、コピー制限がかけられています。
よって、HDDに録画したものをDVDなどの媒体に移すともとのHDDからは消えてしまいます。
この点について過剰な規制であるという指摘があり、コピー制限を緩和したダビング10への移行が話し合われているところであることはお伝えしました。

さてそのような状況下で、日本の地上波デジタル放送を受信するチューナーで、複製制限を回避する機能を有するものが台湾で発売され、関係者に大変な衝撃を与えています。

これに対して、総務省は、これを念頭において、そのような機器の規制を検討する方向であることが明らかになりました。

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総務省、「無制限」機の規制を検討・デジタル放送番組の複製(日本経済新聞2007年12月24日)

総務省は地上デジタル放送の番組を録画して無制限にコピーできる海外製の機器の利用を規制する方向で検討する。デジタル番組は複製しても画質が落ちないため、無制限に複製すると著作権者や出演者の利益を侵害し、コンテンツ(情報の中身)産業の育成の障害につながりかねないと判断した。
(略)
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この台湾で販売された機器は「フリーオ」という名称で、数百台を販売後、業者は雲隠れした模様です。
日本へは個人が輸入する形で持ち込まれています。

著作権法の勉強をされている方なら、コピーガードをはずす事は著作権法30条1項2号から著作権法違反(正確には私的目的の複製とはされない)であるのだから、なぜわざわざ新たな規制をそれも総務省が検討するのかおかしく感じられるかもしれません。
業者は台湾にいるとしても、個人が使用することを違法とできるではないかと考えるのは非常にもっともです。

しかし、この「フリーオ」は著作権侵害ではない可能性があるのです。
技術的な問題であるので、詳述は避けますが、コピーガードをはずしているのではなく、信号自体は残しているような仕組みになっているため、著作権法違反になるかが難しいと、入手して解析を行った専門家(日経パソコンの記事)が指摘しています。

著作権法30条1項2号の解釈としては、信号の除去・改変が要件となっているため、日経パソコンの分析が正しいとすると、フリーオを使った地上波デジタルの録画と複製は法的には私的複製ということになり、全くもって合法です。これは大変な衝撃であり、放送を監督する総務省が対策を考えるのは自然な発想ではないかと思われます。

雲隠れした業者は、再度の販売を行うでしょうから、問題は今回の一件では終わらないと思われます。

さて、ただフリーオの使用に当たって何の犯罪にも該当せず、民事上もまったく違法性はないかというとそうでもありません。

デジタル放送の受信には、B-CASカードがいりますが、こんなとんでもない機械ですから、当然B-CASカードは付属していません。よって購入者は別途カードを入手する必要がありますが、この際、フリーオのマニュアルに具体的な方法は明記されていないものの、購入した個人は、目的を偽って発行を受けると多分カードの発行団体に対する詐欺となるでしょう。
もっとも、自分で購入した適正な機器に付属したカードを使うなら、カードの利用契約違反にはなりますが、別途刑事責任を生じさせるかは微妙でしょう。
最初からフリーオへ転用するつもりなら詐欺かもしれませんが、すでに購入済みのカードなら詐欺にはならないでしょう。

この機器ですが、回路は極めてシンプルであり、原価は極めて安いと考えられます。
よって、当該業者にとっては非常においしい商売になっているようで、この後も続くことが予想されます。
規制のかけすぎがゆえに、あらたにジャンクな問題を生んでしまった感じです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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