公取委、不当廉売にも課徴金を設ける方向で検討


独禁法違反のエンフォースメントには排除措置命令の他に課徴金がありますが、課徴金はすべての独禁法違反行為に適用させるわけではなく、一部に限られています。
具体的には現行では、課徴金は、3種の独禁穂違反行為のうち不当な取引制限と私的独占の一部に用意されています。
第7条の2〔事業者に対する課徴金〕
事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)に百分の十(小売業については百分の三、卸売業については百分の二とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一 商品又は役務の対価に係るもの
二 商品又は役務について次のいずれかを実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの
イ 供給量又は購入量
ロ 市場占有率
ハ 取引の相手方
②前項の規定は、事業者が、私的独占(他の事業者の事業活動を支配することによるものに限る。)で、当該他の事業者(以下この項において「被支配事業者」という。)が供給する商品又は役務について、次の各号のいずれかに該当するものをした場合に準用する。この場合において、前項中「当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額)」とあるのは「当該事業者が被支配事業者に供給した当該商品又は役務(当該被支配事業者が当該行為に係る一定の取引分野において当該商品又は役務を供給するために必要な商品又は役務を含む。)及び当該一定の取引分野において当該事業者が供給した当該商品又は役務(当該被支配事業者に供給したものを除く。)の政令で定める方法により算定した売上額」と、「(小売業については百分の三、卸売業については百分の二とする。)」とあるのは「(当該事業者が小売業を営む場合は百分の三、卸売業を営む場合は百分の二とする。)」と読み替えるものとする。
一 その対価に係るもの
二 次のいずれかを実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの
イ 供給量
ロ 市場占有率
ハ 取引の相手方
③前二項に規定する「市場占有率」とは、一定の取引分野において一定の期間内に供給される商品若しくは役務の数量のうち一若しくは二以上の事業者が供給し、若しくは供給を受ける当該商品若しくは役務の数量の占める割合又は一定の取引分野において一定の期間内に供給される商品若しくは役務の価額のうち一若しくは二以上の事業者が供給し、若しくは供給を受ける当該商品若しくは役務の価額の占める割合をいう。
④第一項の場合において、当該事業者が次のいずれかに該当する者であるときは、同項中「百分の十」とあるのは「百分の四」と、「百分の三」とあるのは「百分の一・二」と、「百分の二」とあるのは「百分の一」とする。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であつて、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
六 協業組合その他の特別の法律により協同して事業を行うことを主たる目的として設立された組合(組合の連合会を含む。)のうち、政令で定めるところにより、前各号に定める業種ごとに当該各号に定める規模に相当する規模のもの
⑤第一項の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が、当該違反行為に係る事件について第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が最初に行われた日(以下この条において「調査開始日」という。)の一月前の日(当該処分が行われなかつたときは、当該事業者が当該違反行為について第五十条第六項において読み替えて準用する第四十九条第五項の規定による通知(次項及び第七項において「事前通知」という。)を受けた日の一月前の日)までに当該違反行為をやめた者(次項に該当する場合を除き、当該違反行為に係る実行期間が二年未満である場合に限る。)であるときは、第一項中「百分の十」とあるのは「百分の八」と、「百分の三」とあるのは「百分の二・四」と、「百分の二」とあるのは「百分の一・六」と、前項中「百分の四」とあるのは「百分の三・二」と、「百分の一・二」とあるのは「百分の一」と、「百分の一」とあるのは「百分の〇・八」とする。
⑥第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が次の各号のいずれかに該当する者であるときは、第一項中「百分の十」とあるのは「百分の十五」と、「百分の三」とあるのは「百分の四・五」と、「百分の二」とあるのは「百分の三」と、第四項中「百分の四」とあるのは「百分の六」と、「百分の一・二」とあるのは「百分の一・八」と、「百分の一」とあるのは「百分の一・五」とする。
一 調査開始日からさかのぼり十年以内に、第一項の規定による命令を受けたことがある者(当該命令が確定している場合に限る。次号において同じ。)又は第十三項若しくは第十六項の規定による通知若しくは第五十一条第二項の規定による審決を受けたことがある者
二 第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が行われなかつた場合において、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日からさかのぼり十年以内に、第一項の規定による命令を受けたことがある者又は第十三項若しくは第十六項の規定による通知若しくは第五十一条第二項の規定による審決を受けたことがある者
⑦公正取引委員会は、第一項の規定により課徴金を納付すべき事業者が次の各号のいずれにも該当する場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じないものとする。
一 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち最初に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日(第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分が行われなかつたときは、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日。次号及び次項において同じ。)以後に行われた場合を除く。)であること。
二 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。
⑧第一項の場合において、公正取引委員会は、当該事業者が第一号及び第三号に該当するときは同項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を、第二号及び第三号に該当するときは第一項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、それぞれ当該課徴金の額から減額するものとする。
一 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち二番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後に行われた場合を除く。)であること。
二 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち三番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者(当該報告及び資料の提出が当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後に行われた場合を除く。)であること。
三 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。
⑨第一項の場合において、公正取引委員会は、当該違反行為について第七項第一号又は前項第一号若しくは第二号の規定による報告及び資料の提出を行つた者の数が三に満たないときは、当該違反行為をした事業者のうち次の各号のいずれにも該当する者(第七項第一号又は前項第一号若しくは第二号の規定による報告及び資料の提出を行つた者の数と第一号の規定による報告及び資料の提出を行つた者の数を合計した数が三以下である場合に限る。)については、第一項又は第四項から第六項までの規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、当該課徴金の額から減額するものとする。
一 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後公正取引委員会規則で定める期日までに、公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出(第四十七条第一項各号に掲げる処分又は第百二条第一項に規定する処分その他により既に公正取引委員会によつて把握されている事実に係るものを除く。)を行つた者
二 前号の報告及び資料の提出を行つた日以後において当該違反行為をしていた者以外の者
⑩公正取引委員会は、第七項第一号、第八項第一号若しくは第二号又は前項第一号の規定による報告及び資料の提出を受けたときは、当該報告及び資料の提出を行つた事業者に対し、速やかに文書をもつてその旨を通知しなければならない。
⑪公正取引委員会は、第七項から第九項までの規定のいずれかに該当する事業者に対し第一項の規定による命令又は第十三項の規定による通知をするまでの間、当該事業者に対し、当該違反行為に係る事実の報告又は資料の提出を追加して求めることができる。
⑫公正取引委員会が、第七項第一号、第八項第一号若しくは第二号又は第九項第一号の規定による報告及び資料の提出を行つた事業者に対して第一項の規定による命令又は次項の規定による通知をするまでの間に、次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、第七項から第九項までの規定にかかわらず、これらの規定は適用しない。
一 当該事業者が行つた当該報告又は提出した当該資料に虚偽の内容が含まれていたこと。
二 前項の場合において、当該事業者が求められた報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたこと。
三 当該事業者がした当該違反行為に係る事件において、当該事業者が他の事業者に対し第一項に規定する違反行為をすることを強要し、又は他の事業者が当該違反行為をやめることを妨害していたこと。
⑬公正取引委員会は、第七項の規定により課徴金の納付を命じないこととしたときは、同項の規定に該当する事業者がした違反行為に係る事件について当該事業者以外の事業者に対し第一項の規定による命令をする際に(同項の規定による命令をしない場合にあつては、公正取引委員会規則で定めるときまでに。第十六項において同じ。)、これと併せて当該事業者に対し、文書をもつてその旨を通知するものとする。
⑭公正取引委員会は、第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。以下この項、第十七項及び第十八項において同じ。)の場合において、同一事件について、当該事業者に対し、罰金の刑に処する確定裁判があるときは、第一項、第四項から第六項まで、第八項又は第九項の規定により計算した額に代えて、その額から当該罰金額の二分の一に相当する金額を控除した額を課徴金の額とするものとする。ただし、第一項、第四項から第六項まで、第八項若しくは第九項の規定により計算した額が当該罰金額の二分の一に相当する金額を超えないとき、又は当該控除後の額が百万円未満であるときは、この限りでない。
⑮前項ただし書の場合においては、公正取引委員会は、課徴金の納付を命ずることができない。
⑯公正取引委員会は、前項の規定により課徴金の納付を命じない場合には、罰金の刑に処せられた事業者に対し、当該事業者がした第一項又は第二項に規定する違反行為に係る事件について当該事業者以外の事業者に対し第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による命令をする際に、これと併せて文書をもつてその旨を通知するものとする。
⑰第一項の規定による命令を受けた者は、同項、第四項から第六項まで、第八項、第九項又は第十四項の規定により計算した課徴金を納付しなければならない。
⑱第一項、第四項から第六項まで、第八項、第九項又は第十四項の規定により計算した課徴金の額に一万円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
⑲第一項又は第二項に規定する違反行為をした事業者が会社である場合において、当該会社が合併により消滅したときは、当該会社がした違反行為並びに当該会社が受けた第一項(第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による命令、第十三項及び第十六項の規定による通知並びに第五十一条第二項の規定による審決(以下この項において「命令等」という。)は、合併後存続し、又は合併により設立された会社がした違反行為及び当該合併後存続し、又は合併により設立された会社が受けた命令等とみなして、前各項の規定を適用する。
⑳前項の場合において、第七項から第九項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
21実行期間の終了した日から三年を経過したときは、公正取引委員会は、当該違反行為に係る課徴金の納付を命ずることができない。
この課徴金は、従来から二重処罰の禁止に当たるのではないかという指摘から、不当利益の剥奪であると説明されており、その適用範囲が厳格に解されるというドグマがありました。
しかし近年になりようやくそのドグマから解放され、課徴金がいろいろな分野で採用されてきているのは周知の通りです。
そのような流れの延長上なのでしょうが、公取委は、独禁法違反行為で現行では課徴金が設けられていない不公正な取引方法の一つである不当廉売にも課徴金を設ける方向で検討することを明らかにしました。
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「不当廉売」にも課徴金・公取委、独禁法改正で検討(日本経済新聞2007年12月19日)
公正取引委員会は来年の通常国会への提出を目指している独占禁止法改正案で、原価を割り込むような低価格で販売する「不当廉売」を新たに課徴金の対象にする方向で検討に入った。伊東章二事務総長が19日の記者会見で明らかにした。課徴金の算定方法や、どういった不当廉売を対象にするかなど制度の詳細については今後詰める。
 現行法では不当廉売に対しては、違反行為の差し止めを求める排除命令が最も重い処分となっている。公取委は10月に公表した改正法の基本方針の中で、談合やカルテルに限っていた課徴金の対象行為の拡大を提案。不当廉売については、競合他社を市場からの撤退に追い込むなど、競争に大きな影響を与える「排除型私的独占」に該当する場合に限って課徴金を科す方針を示していた。
 これに対し、自民党や中小企業団体は「競争に実際に影響が出てからの制裁では、被害を受けた企業の立て直しが困難」と反論。行為が認められた時点で課徴金を適用するよう求めていた。
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課徴金は不当利益の剥奪だけでなく、制裁の意味も併せ持つという風に説明が変わったので、原価割れで販売を行い利益は出ていないが市場支配を図っているという段階でも、課徴金の対象とするのは理論的には可能であろうということになります。
ただ、これには理論的のほかに政治的というか事実上の問題がありまして、平成17年改正で、不当廉売の結果と似た事態になる排除型の私的独占も課徴金の対象とする方向で検討したのですが、これは見送られました。
これは理論的には、他者排除は活発な競争の結果もたらされる可能性もあり、一概に独禁法違反とすることもできないからですが、このときと同じ意図を持ったものが、私的独占ではなく不当廉売に課徴金という形で復活してきているとみることができます。
すると自民党と中小企業団体が推進的であることの理由が分かりますね。
しかし、動機はどうあれ、私的独占で構成するよりも、不当廉売のほうが違反要件が明確であるので、健全な競争の結果まで独禁法違反として捉えてしまうことは無いようにも思えます。
個人的には中々考えさせるれる一件だなあと思いました。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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