福岡市の職員が飲酒運転の挙句、追突事故を起こして、車が橋から転落して車内の幼児3人が死亡するという非常に痛ましい事故が以前ありましたが、この件に関する刑事裁判の第一審が福岡地裁で大詰めを迎えています。
そのような中、裁判所は業務上過失致死と道路交通法違反の予備的訴因を追加するように検察側に訴因変更を出し、注目が集まっています。
検察側は危険運転致死罪で起訴しているため、軽い罪になるのではないかという見方が広がっているわけです。
訴因というのが何かは非常に微妙な問題で、単なる罰条の変更ではなく、審判の対象の変更ということになります。
訴因変更命令は刑事訴訟法312条2項に定められているもので、裁判所の権限であり、義務ではありません。
ただし判例により、訴因を変更すれば明らかに有罪になるときは義務になることもあるとされているようなものです。
さて、今回の訴因変更命令はどういう意図で出されたのかは定かではありませんが、少なくともこれまでの公判で、危険運転致死を認めうるだけの心証は得られていないのでしょう。
証拠として提出されている酒気帯び検査の結果がどれほどでもないためなのが作用しているのかもしれません。
この点については、事故後に水を飲んでいたという報道もあり、証拠隠滅の可能性もないではないですが、仮にそうだとしても、水を飲んでいなければ泥酔の結果がでていたかは分からないわけで、そこは検察側が立証しなければなりません。
立証活動を総合したところ、心証が得られていないため、訴因変更に踏み切ったというのが実際かもしれません。
ただ、どうもこの件は、すでに論告までいっているようなので、この時期に訴因変更を促すのは極めて異例です。
また、別の問題ですが、業務上過失致死と危険運転致死で、訴因変更をせずに縮小認定ができるかというのも刑事訴訟法的には問題になりそうです。
訴因変更を促した以上、できないと考えたのでしょうが…。