特許法27条に特許原簿に登録する事項があげられていますが、そこには、ライセンスされる対象である専用実施権または通常実施権についても登録することが定められています。
特許法
第27条(特許原簿への登録)
次に掲げる事項は、特許庁に備える特許原簿に登録する。
一 特許権の設定、存続期間の延長、移転、消滅、回復又は処分の制限
二 専用実施権又は通常実施権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限
三 特許権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限
2 特許原簿は、その全部又は一部を磁気テープ(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含む。以下同じ。)をもつて調製することができる。
3 この法律に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は、政令で定める。
しかし、特許登録令によると、ライセンシーの住所氏名や対価の定めがあるときはその内容についても登録しなければなりません。
これが嫌われて、ライセンス契約を登録をしない傾向があると指摘されています。
登録すると対抗力が付与されるのですが、それがされないために、特許権が買収された場合、あるいは特許権者自身が買収された場合には、突然ライセンス契約が打ち切られることになりかねませんし、一方で特許を買うことを検討している側にとっても、情報が不足しており、行動に制約を受けることがありえます。
そこでこの制度の利用を促進しようということで、特許庁で検討が進められています。
契約者の名前や対価などの一部内容の非開示化が検討されています。
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特許使用権の保護強化、登録制度を使いやすく・特許庁方針(日本経済新聞2007年10月28日)
特許庁は企業の特許使用権(ライセンス)の保護を強化するため、ライセンスの登録制度を使いやすくする方針だ。企業の合併や買収により、特許権の移動があった場合でも契約を保護することにつながる使用権の登録制度を見直す。
見直しの対象となるのは、企業のライセンス契約を保護する特許使用権の登録制度。ライセンスを登録した場合に公開を義務付けている企業名や、契約金の額などを原則非公開とする。
(略)
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特許庁の検討の議事録や資料は以下にあります。
産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会通常実施権等登録制度ワーキンググループ
当事者間で交わされるライセンス契約には、契約の終了事由でライセンサーがM&Aにあった場合をあげていることもあるでしょうし、ライバル会社を邪魔するためにライセンサーを買収することもあるそうなので、登録制度を整備すれば、ライセンシーの保護が完全になされるわけではないと思いますが、ひとまず誘引にはなると思います。